猫が震える原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

猫がブルブルと震える原因としてどんな病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

寒さで猫が震えているならば、暖めてあげればいいのでしょう。しかし、その震えの原因が病気であれば、何らかの対処が必要です。猫が震えている、いつもと様子が違うなど気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫が震える原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫が震える原因とは?

―愛猫が震えているのですが、どんな原因が考えられますか?

愛猫が震えていると、「寒いのではないか」と心配になる飼い主さんも多いのではないでしょうか。

確かに猫は、寒いときに体を震わせることはあります。しかし、それ以外にもストレスや痛み、老化など、以下に挙げる原因によっても震えることがあります。

ストレスを感じているとき

人間と同様に、猫も不安や恐怖を感じている場合には、緊張で体がこわばり、小刻みに震えることがあります。

痛み

避妊手術後のように手術の傷が痛んだり、関節炎によって足が痛んだりすると、猫は体が震えることがあります。

老化

高齢の猫の場合では、立ち止まっているときに後ろ足が震えることがあります。この震えは左右対称に見られ、動き始めると震えは止まります。年齢とともに進行する場合もありますが、後ろ足の震え以外に異常が見られることはありません。

このように、猫の震えは、生理的な原因によって起こる場合が多くありますが、病気が原因のときもあります。

猫が震える原因として考えられる病気

猫が震える原因として考えられる病気

―猫が震える原因として考えられる病気はありますか?

猫が震える原因としては、てんかんやパルボウイルス感染症、代謝異常、中毒などの病気が考えられます。

てんかん

「てんかん」はさまざまな原因によって発作が起こる病気のことです。脳腫瘍や脳炎といった脳の異常を原因として起こる「構造的てんかん」と、原因がわからない「特発性てんかん」の、大きくふたつに分けられます。

発作には体の一部だけが痙攣(けいれん)を起こす「部分発作」と、全身がけいれんを起こす「全般発作」があります。全般発作を起こすと意識がなくなり、尿失禁やよだれ、手足をばたつかせるなどの症状が見られます。

パルボウイルス感染症

パルボウイルスは感染力が高いウイルスで、子猫が発症するとしばしば死に至ることがあり、非常に怖い病気です。通常は、腸炎による嘔吐や下痢といった消化器症状や、白血球数の減少による免疫力の低下などがみられます。

しかし、妊娠中の母猫が感染し、お腹の中にいる胎児にも感染してしまうと、胎児は脳に異常がある状態で生まれてしまいます。この場合、生まれてきた子猫には震えのほかにも、ふらついてうまく歩けない、首をかしげるしぐさがずっと続く(斜頸:しゃけい)などの症状が見られます。

代謝異常

猫は、血糖値が低くなってしまう「低血糖症」や、血液中のカルシウム濃度が低くなってしまう「低カルシウム血症」によって震えることがあります。

低血糖症の原因には、重度の感染症による敗血症や飢餓、肝臓の病気、悪性腫瘍(特に膵臓がん)などが挙げられます。どの年齢にも起こりますが、若齢の猫は低血糖症になりやすい傾向があります。

一方、低カルシウム血症の原因には、上皮小体(副甲状腺)機能低下症や慢性腎臓病、急性腎不全、中毒などが挙げられます。低カルシウム血症になると、震え以外にも元気や食欲がなくなったり、顔をかゆがったりするなどの症状が見られます。

中毒

猫が誤って次に挙げるものなどを口にすると、中毒を引き起こし、けいれんすることがあります。

  • ピレスリンや有機リン(殺虫剤に含まれる成分)
  • マイコトキシン(カビが作り出す毒素)
  • イベルメクチン
  • カフェイン

猫が震えてこんな症状なら、すぐ病院へ

猫が震えてこんな症状なら、すぐ病院へ

心配のいらない猫の震えの症状

―心配のいらない震えについて教えてください。

寒さや老化に伴う猫の震えについては生理的な反応であるため、心配はいらないでしょう。

受診を強く勧める、猫の震え以外の症状

―受診すべき震えの見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

病気が原因の場合は緊急性が高いことが多いため、以下の症状が見られる場合は、すぐに動物病院を受診することをお勧めします。

  • 意識を失うような発作を起こしている
  • ふらふらしている
  • ぐったりしている
  • 激しい嘔吐をしている

痛みによる震えは、緊急性がそれほど高くありませんが、痛みの原因を取り除かなければなりません。痛みは猫にとって大きなストレスになるため、動物病院を受診して対処してもらいましょう。

受診の際の準備

―愛猫を動物病院に連れて行く際、どんな準備をしておいたほうがいいですか?

診察の時に症状を口頭で正確に伝えることはなかなか難しいため、猫が震えているときの様子を動画で撮影しておくと、診察に役立ちます。

猫が震えるときの対処法

猫が震えるときの対処法

―猫が震えを起こしたら、どう対処すればいいのでしょうか?

寒さが原因の場合

空調機器などで温度調節をしたり、ペット用ヒーターを用意したりしましょう。ペット用ヒーターがない場合は、ペットボトルにお湯を入れてタオルでくるめば、簡易的な湯たんぽになります。

ストレスが原因の場合

とにかく猫を落ち着かせることが大切です。狭い場所や暗い場所に隠れているのであれば、そのままそっとしてあげましょう。外出先であれば、やさしく声をかけたり頭や体をなでたりしてあげるといいでしょう。

老化が原因の場合

震えそのものを止めることは難しいため、猫が快適に暮らせるような環境作りをしてあげてください。例えば、猫の足に負担がかからないようにトイレや食事の場所を寝床から近い場所に設置したり、生活スペースに段差を作らないようしたりしましょう。ただし、高齢の猫の場合は、関節炎によって足の痛みが原因で震えている可能性もあるため、健康診断も兼ねて動物病院を受診してみてもいいかもしれません。

てんかんが原因の場合

猫を落ち着かせようと手を出すと、かまれてしまうおそれがあります。すぐに動かそうとせず、まずは発作を起こしている猫がケガをしないように、周囲にある物をどかすなどして、安全を確保しましょう。てんかんは数分で収まることが多いため、収まったらなるべく早く動物病院を受診してください。また、数分経っても猫の発作が収まらない場合には、動物病院に電話で連絡をして指示を仰ぎましょう。

中毒が原因の場合

吐かせようとするのは危険です。また、嘔吐をしているときに水を飲ませると、さらに吐いてしまうことがあります。まずは動物病院に電話で連絡をして、指示を仰ぎましょう。

このほかの原因が疑われる場合や、原因がわからない場合などには、猫に意識があっても自己判断せずに、すぐに動物病院を受診しましょう。

猫の震えの予防

―猫の震えを予防するには、どうしたらいいですか?

子猫の場合、極度にお腹が空くと低血糖症になることがあります。1歳までは月齢によって餌の種類や量が変わっていくため、食事の内容が適切かどうかをこまめに確認するようにしましょう。

また、中毒は生活環境に気を付けると、ある程度予防できます。中毒を起こす原因となり得るものは、猫が誤って接触することがないよう気を付けましょう。猫が生活している空間に置かないようにしたり、猫が開けられない扉や引き出しの中にしまったりするなどしてください。

なお、パルボウイルス感染症は、ワクチン接種によって予防できます。パルボウイルス感染症は感染率も致死率も高い病気なので、子猫のうちからワクチン接種をおすすめします。特に、将来的に妊娠・出産を考えている場合は、積極的にワクチン接種を行うようにしましょう。

まとめ

猫の震えは、寒さやストレスなど、生理的な原因で起こる場合が多く見られます。しかし、原因がパルボウイルス感染症や中毒などの場合には、命にかかわることもあります。寒さや老化以外に震えの原因が疑われる場合は、様子を見ないで、すぐ獣医師に相談しましょう。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。