猫の夏バテの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

猫は暑さに強いと言われますが、湿度には弱く、夏バテをする場合があります。猫が夏バテをするとどんな症状が現れるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防法や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

気温や湿度が上昇する時期に、愛猫の食欲や元気がなくなってきたら、夏バテや何らかの病気のサインかもしれません。すぐに獣医師さんに相談しましょう。

猫の夏バテの原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

猫の夏バテとは?

―猫は暑さに強いイメージがありますが、夏バテをすることがあるのでしょうか?

結論からいうと、猫も夏バテをします。

猫の先祖である「リビアヤマネコ」は、砂漠やサバンナなど乾燥した暑い地域に生息しています。そのため、猫は比較的暑さに強いものの、湿度には弱いのが特徴です。猫は高温多湿な日本の夏が苦手であり、夏バテをしやすいと言えます。

夏バテと熱中症の違い

―暑さが原因の病気と言えば熱中症を思い浮かべますが、夏バテとどんな違いがありますか?

夏バテと熱中症では、まず症状に違いがあります。それぞれの症状を見てみましょう。

夏バテしている猫の症状

  • 食欲が落ちる
  • ごはんを食べない
  • 嘔吐(おうと)や下痢をしている
  • 元気がなくなる
  • おしっこの量が減る

熱中症の猫の症状

  • 元気がなくなる
  • 口を開けて呼吸をする(開口呼吸)
  • 嘔吐や下痢をしている
  • 耳や肉球などが熱くなる
  • ふらつく

重度の熱中症は意識がなくなったり、けいれんを起こしたりして、最悪の場合は死に至ります。一方、夏バテは、急激な体調変化はありません。数日から数週間かけて、症状が少しずつ現れます。

猫の夏バテの原因

自律神経の乱れ

―猫はどうして夏バテになってしまうのですか?

夏バテは、急激な温度変化や夏の高温多湿な環境、自律神経の乱れが原因で起こる体調不良の総称です。

猫の自律神経の乱れは、精神的ストレスや不規則な生活などが原因で起こるのではなく、環境の変化といった外的要因が大きく関係しています。

自律神経には体温を一定に保つ働きがあります。夏に、冷房が効いた空間と効いていない空間を行き来すると、体温を頻繁に上げ下げしなければなりません。すると自律神経が疲れてしまい、乱れが生じるのです。

猫は湿度に弱く、高温多湿な日本の夏に対応しきれない

猫は湿度に弱い傾向にあります。また、人間とは違い、全身に汗をかけず、体温を下げる働きが高くありません。そのため、高温多湿な日本の夏の環境に体が対応しきれず、夏バテを起こしやすいのです。

季節を問わず高温多湿や激しい温度変化に注意

―猫の夏バテに注意しなければならない時期や条件について教えてください。

猫が快適に感じる温度は25℃前後、湿度は50~60%くらいだと言われています。夏以外でも、これより高温多湿になる時期には注意が必要です。

また、季節の変わり目や冷房を使用する日など、温度変化が激しい環境下でも夏バテしやすいため気を付けましょう。

夏バテしやすい猫種と特徴

夏バテしやすい猫種と特徴

―どんな猫が夏バテしやすいのでしょうか。猫種、体質や特徴について教えてください。

長毛種や太った猫は夏バテしやすい傾向にあります。また、短頭種や子猫・老猫なども注意が必要です。

長毛種の猫

長毛種の猫は、もともと寒い地域に生息していた品種です。長く密度が高い被毛は保温効果が高いため、日本のような高温多湿な環境下に弱く、夏バテに気を付けましょう。

短頭種の猫

短頭種の猫は、もともと体の構造上呼吸がしづらい品種です。そのため、呼吸による体温調節も苦手で、夏バテしやすいと言えます。

太った猫

太った猫は皮下脂肪が多く、体の中の熱をうまく外に逃がすせないため、夏バテに注意が必要です。

子猫や老猫

子猫や老猫も夏バテしやすいと言えます。子猫は体温調節機能が未熟なため、老猫の多くは体温調節機能が衰えているためです。

猫が夏バテをしていて、こんな症状ならすぐ病院へ

猫が夏バテをしていて、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない場合

―猫が夏バテをしていても、様子を見ていい場合はありますか?

基本的には動物病院の受診をお勧めします。症状が軽度で、受診すべきかを悩む場合は、お近くの動物病院に電話で相談をしましょう。

受診を強く勧める場合の症状

―受診すべき猫の夏バテの見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

猫は体調不良を悟られないように、痛みや苦しみなどを隠す本能があります。そのため、次のような症状が見られる場合は、すでに夏バテがつらい状況にある可能性が高いでしょう。

  • 食欲不振
  • 嘔吐や下痢をしている
  • ぐったりしている
  • おしっこの量が少ない

夏バテは熱中症と違い、すぐに命にかかわるような病気ではありません。しかし、放置すると脱水症状や泌尿器系の病気を引き起こすリスクがあります。また、熱中症や別の病気のサインの可能性もあるため、すぐに動物病院を受診してください。

猫が夏バテをしているときの対処法

―猫が夏バテをしているときに、自宅でできる応急処置を教えてください。

猫のおしっこの量が少なく、明らかに脱水症状を起こしている場合は、水や猫用の経口補水液を飲ませましょう。ただし、嘔吐や下痢など消化器症状も併発をしているときは逆効果になる場合があるため、猫の様子をよく観察することが大切です。

―病院ではどのような治療を行うのでしょうか?

脱水症状が見られる場合は点滴を、嘔吐や下痢をしている場合は薬の投与や療法食の処方をするなどの治療を行います。基本的には対症療法です。

猫の夏バテの予防と対策

猫の夏バテの予防と対策

―猫が夏バテにならないための対策はありますか?

室温を25℃前後に保つ

猫にとって快適な温度は25℃前後です。これより高すぎても低すぎても、あまりよくありません。また、エアコンをつけたり消したりして室温が大きく変化すると、猫の自律神経が乱れる可能性があります。室温は一年を通して、常に25℃前後を保つようにしましょう。また、湿度は50~60%くらいを保ってください。

猫が部屋を移動できるようにする

猫は暑いと感じると涼しい場所へ、寒いと感じると暖かい場所へ自ら移動して体温を調節しています。しかし、猫がエアコンのリモコンを踏んで電源を切ってしまった、エアコンが効いていない部屋にいるときに誤ってドアが閉まったなど、高温多湿な場所に閉じ込められる可能性もあります。ドアストッパーを設置してドアが思わぬときに閉まらないように工夫をして、いつでも猫が部屋を移動できるようにしましょう。

冷感グッズを使う

冷感マットやアルミプレートなど、猫用の冷感グッズを部屋に置いておくのもいいでしょう。ただし、ジェルタイプは猫が引っかいて穴を開け、ジェルを誤飲するリスクがあります。引っかき癖がある猫や留守番が多い猫には使わないでください。

水を飲むよう工夫する

猫はもともと飲水量が少ない性質のため、水飲み場を複数設置し、飲水を促してください。また、流水が好きな猫もいるので、水が流れる給水器を設置してもいいでしょう。

それでも飲水量が心配な場合は、ウェットフードのような水分量の多いごはんを与えてください。ただし、ウェットフードは歯周病になりやすいデメリットもあるため、与え方や頻度には注意が必要です。

栄養補助食品を与える

夏場の体力を維持するために、栄養補助食品を与えるのも有効です。食欲増進効果が期待できるものや甘味があって嗜好性(しこうせい)が高いものなど、さまざまなタイプがあります。愛猫に合ったタイプを選んであげましょう。

まとめ

暑さには強い猫ですが、高温多湿な環境下では夏バテをします。しかし、室内環境に注意してあげたり、食事に気を付けてあげたりすることで予防が可能です。夏バテ知らずの夏を過ごせるよう、暑くなる前からしっかり対策をしてください。

そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。