猫のしこり・腫瘍の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年09月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

猫にしこりが見られる、何か腫れものが見られる場合、どんな原因、病気が考えられるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

そのうち治るだろうと思っていたら、しこりが大きくなったり、あちこちに広がったりして病状が悪化し、取り返しのつかない事態になってしまうかもしれません。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう

猫のしこり・腫瘍の原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

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しこり・腫瘍とは?

―しこりといってもさまざまな種類があると思います。それらについて教えてください。

しこりは医学的には腫瘤と呼びます。腫瘤の原因はさまざまですが、何らかの体の異常によるものです。できもののような炎症によって腫瘤ができる場合もありますし、腫瘍(いわゆる「がん」)が原因で腫瘤ができる場合もあります。

腫瘍の中には、良性(転移を起こさず健康に影響がない)ものと悪性(転移したり腫瘍が大きくなることで健康に悪影響がでるもの)があります。腫瘍は、しこりのできた箇所や原因によりますが、痛みがあるかないか、触診したときに硬い、やわらかいなどのさまざまな形態をとります。

猫のしこり・腫瘍の原因として考えられる病気とは?

猫のしこり・腫瘍の原因として考えられる病気とは?

―猫にしこりができる病気として、どんなものがありますか?

腫瘤の原因は大きく分けて炎症性のもの、過形成、腫瘍に分類できます。

炎症性の腫瘤

炎症性の腫瘤は、細菌や真菌感染などにより、炎症部位が腫れて硬くなったものです。炎症が長引くとマクロファージといった免疫担当細胞が集まり、肉芽腫(※)を形成することがあります。炎症性の腫瘤は、多くの場合、痛みがあり、肉眼で観察できるほど赤く腫れます。

※肉芽腫(にくがしゅ)とは、慢性的な炎症によって生じる腫瘍のこと

過形成

過形成とは、正常な細胞が外来の何らかの刺激によって過剰に増殖し、組織が大きさを増した状態を言います。手で何かを強く握り続けてできる「たこ」のようなものです。通常は痛みがなく、触診するとほとんどが硬く、ほかの組織を圧迫するような悪影響がないかぎりは良性です。

腫瘍

腫瘍は、細胞が過剰に、そして無秩序に増殖する状態を指すもので、いわゆる「がん」です。

―腫瘍の良性と悪性はどのように判断されるのですか?

腫瘍は良性と悪性のものに分類されます。分類の基準としては、細胞の増殖形態、増殖速度、転移性によって判断されます

良性腫瘍は、増殖が膨張性(ほかの正常な組織を押しのけて増殖する)で周囲の細胞との境界が明瞭であり、増殖が遅く、転移性がありません。一方、悪性腫瘍は、増殖が浸潤性(周囲の組織に入り込みながら増殖する)で周囲の細胞との境界が不明瞭であり、増殖が速く、転移を起こします。

―猫でよく見られる腫瘍はどのようなものですか?

猫の良性腫瘍

猫の場合、良性腫瘍では、乳頭腫や脂肪腫、毛芽腫などがよく見られます。どれも皮膚上や皮膚の直下にできることが多く、ほとんどの場合、痛みはありません。

また、猫では、ワクチン接種後にワクチン誘導性肉腫と呼ばれる腫瘍が見られることがあります。これは、ワクチンに含まれている成分が原因だと考えられていますが、ワクチンを打つ場所を毎回変えれば予防できます。

猫の悪性腫瘍

猫の悪性腫瘍としては、リンパ腫、肥満細胞腫、乳腺腫瘍、扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)がよく見られます。

リンパ腫

リンパ腫は、免疫を担当している細胞であるリンパ球が、がん化したもので、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)感染により発生のリスクが高まります。特に、皮膚型のリンパ腫で腫瘤が認められることが多く、発生する場所や数はさまざまです。

リンパ腫のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「猫のリンパ腫」を併せてご覧ください。

肥満細胞腫

猫の肥満細胞腫について、皮膚型肥満細胞腫では良性で自然に退縮するものもありますが、内臓に発生するものは多くが悪性です。肥満細胞腫もさまざまな場所に腫瘤が認められる可能性があります。

肥満細胞腫のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「猫の肥満細胞腫」を併せてご覧ください。

乳腺腫瘍

猫の乳線腫瘍は、避妊手術をしていないメス猫で多く見られ、ほとんどの場合で悪性です。乳腺腫瘍は乳腺がある場所(お腹の下のほうの乳首の近く)に発生し、ひとつから複数のちいさな腫瘤を作ります。進行すると大きくなり、自壊し出血を伴うことがあります。

乳腺腫瘍のより詳しい原因、症状、予防については獣医師監修の「猫の乳腺腫瘍」を併せてご覧ください。

扁平上皮癌

扁平上皮癌も猫ではよく見られる腫瘍で、特に毛色が白い猫で多く見られる傾向にあります。また、耳、鼻筋、まぶたなど、日光にさらされる部位での発生でよく見られます。

猫の悪性腫瘍も人のものと同様に加齢に伴い(6歳以降で)増加する傾向にあり、また、腫瘤の診断は獣医師でも難しいものがあります。悪性腫瘍の場合は、早期診断・治療が重要になりますので、放置せずに自己判断は避け、獣医師さんに相談してください。

猫のしこり・腫瘍でこんな症状が見られたら、すぐ病院へ

―どの程度のしこりであれば、様子を見てもいいですか?

しこり、腫瘤は何らかの体の異常ですので、見つけた場合は獣医師さんに相談してください

「PS保険」では、24時間365日、獣医師による無料※電話相談サービス「獣医師ダイヤル」を提供しております。病院へ足を運ぶまでの応急処置を含む医療相談から、素朴な疑問まで幅広く応対してくれるので、もしものときも安心です。

※:通話料はお客さまのご負担になります。

※当サービスは、株式会社チェリッシュライフジャパン(CLJ)と提携し、アニクリ24のサービスを提供するものです。

※Anicli24(アニクリ24)は獣医師による電話医療相談サービスを提供する動物病院です。

猫のしこり・腫瘍の治療について

猫のしこり・腫瘍の治療について

―悪性腫瘍が疑われる場合、どのような診断、検査をするのでしょうか。

腫瘤が認められた場合は触診し、悪性腫瘍が疑われる場合には細胞診(ニードルバイオプシー:注射針で細胞を少量吸い取り、顕微鏡下で観察する)を行います。また、腫瘍の大きさや転移の有無を調べるために必要に応じてX線や超音波(エコー)、CT、MRIで検査をします。

なお、確定診断には、腫瘍の一部を切除して組織検査が必要になることがあります。このほか、場合によって、健康状態の把握のために血液検査を行います。

―猫の悪性腫瘍はどのように治療するのですか?

外科治療

外科治療は、腫瘍があまり大きくなく転移が見られない場合、第一選択となります。ただし、腫瘍を外科的に切除する場合は、再発・転移予防のために組織を大きめに切り取る必要があり、腫瘍の大きさによっては身体欠損部位が大きくなってしまうことがあります。

外科手術によって傷跡は残りますが、猫は被毛があり、皮膚がやわらかく伸びやすいため、傷跡はあまり目立ちません。

化学療法

リンパ腫といった一部の悪性腫瘍は、化学療法(いわゆる抗がん剤治療)が確立されています。副作用の可能性がありますが、猫の健康状態を見ながら投与量を調整し、重篤な副作用が出ないように注意を払って治療を進めます。

放射線治療

一部の悪性腫瘍では放射線療法が有効ですが、対応している病院が限られているため、かかりつけの獣医師さんに紹介状を書いてもらう必要があるかもしれません。

免疫療法

人間の悪性腫瘍と同様に猫の免疫療法の研究も進んでおり、一部の病院では悪性腫瘍の治療法として免疫療法が取り入れられています。

猫の悪性腫瘍に対する治療は、ひとつの療法で行うこともあれば、これらの方法を組み合わせて治療にあたる場合もあります。

猫のしこり・腫瘍を予防するには?

猫のしこりを予防するには?

―予防法や飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。

リンパ腫は、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスの感染によりリスクが増大します。これらのウイルス感染に対しては、ワクチン接種が有効ですので必ずワクチン接種をするようにしてください。

また、メス猫の乳腺腫瘍は、ホルモン誘導性があり避妊手術によってそのリスクを低下させることが知られています。繁殖の予定のない猫は避妊手術が予防として有効です。

―猫のしこりを早期発見できるように、普段どのようなことを気にしていればいいですか?

普段からブラッシングやシャンプーなどの時に、猫の体を触って何か異常がないかを確認するように心がけておけば早期発見につがります。

まとめ

人と同様に猫の寿命が延びるにつれて悪性腫瘍の罹患率が高まっています。飼い主さんが、猫にしこりを見つけて来院し、悪性腫瘍が発見されることは、しばしばあることです。悪性腫瘍の場合は、早期発見・治療が重要ですので何か気になることが少しでもあれば、獣医師さんに気軽に相談してください。

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  • そのほか気になる猫の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「猫の症状」を併せてご覧ください。

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    記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

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