猫の白血病の症状と原因、治療法について
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
- 猫の白血病ってどんな病気?
- どうして症状が出るの?原因は?
- 猫の白血病の症状とチェック項目
- 猫の白血病はどうやって診断されるの?
- 猫の白血病の治療にはどんな方法があるの?
- どうやって予防したらいいの?
猫の白血病ってどんな病気?
猫の白血病とは、猫白血病ウイルスが感染することで、免疫不全、リンパ腫や白血病といった血液のがん、骨髄異形成症候群や赤芽球癆(せきがきゅうろう)といった血液がうまく作られない病気を引き起こします。
どうして症状が出るの?原因は?
猫白血病ウイルスは、RNA(ribonucleic acid:リボ核酸)ウイルスという種類のウイルスです。これは、動物の体の設計図であるDNA(deoxyribonucleic acid:デオキシリボ核酸)と同じような物質のRNAを持っています。
猫白血病は、RNAからDNAを作り出す「逆転写酵素」という物質を持っており、これにより自身のRNAからDNAを作り出し、宿主の細胞内のDNAに組み込まれて感染が成立します。宿主のDNAに猫白血病ウイルスが組み込まれると、宿主の細胞は自分自身の設計図と勘違いして、ウイルスを大量に作り出し、最終的には宿主の細胞からウイルスが全身に放出されるようになるのです。
猫白血病ウイルスの感染経路は接触感染です。毛づくろいやほかの猫と一緒に食餌をすることで、唾液や鼻水の中に含まれるウイルスが体内に侵入します。ウイルスは、最初に口や喉の粘膜で増殖し、次に赤血球や白血球といった血液の工場である骨髄細胞に感染します。そこで増殖して、さらに全身に広がります。また、妊娠している母猫の胎盤からお腹の中の猫に感染する経胎盤感染や、母乳から感染する経乳汁感染、性行により感染する場合もあります。
なお、年齢により感染のしやすさが変わります。新生子ではウイルスに暴露されるとほぼ100%感染しますが、生後3か月を過ぎると25%に減少します。さらに1歳になると、感染する可能性はかなり低くなります。
猫の白血病の症状とチェック項目
猫白血病ウイルスの感染猫は、1~6歳の比較的若く外に出る猫が圧倒的に多い傾向が見られます。また、感染した猫の多くは、体を守る免疫機能が低下して普通ではかからないような感染症にかかりやすくなります。そのため、リンパ腫や白血病といった血液のがんを発症したり、骨髄異形成症候群や赤芽球癆といった血液がうまく作られない病気になったりして、4年以内に死亡するとされています。
また、リンパ腫は胸の中や腎臓に発生しやすく、リンパ腫が発生すると胸の中に水がたまる胸水が生じ、肺が潰されて呼吸困難になったり、腎臓が老廃物を体外に排出することができなくなったりして体調を崩します。このほか、血液のがんを発生しやすいため、発熱や貧血により歯ぐきを始め粘膜の色が白くなることや、出血を止める血小板が少なくなり出血しやすくなることがあります。
さらに、眼にもリンパ腫ができ、眼が大きくなったり、濁ったりすることがあります。そして、免疫機能が著しく低下すると、口内炎や歯肉炎で口を痛がることや、普通は悪さをしないような細菌やカビなどによって皮膚炎や肺炎などの症状(「日和見感染」と言います)が起きます。
下記のような症状が見られる場合は、白血病の可能性が疑われます。
- 元気・食欲がない
- 熱っぽい
- 歯ぐきを始め粘膜の色が白い
- 口内炎や皮膚炎がある
猫の白血病はどうやって診断されるの?
猫白血病ウイルス感染の診断は、血液検査でウイルスを見つける方法が一般的に行われます。簡易型のELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay:酵素結合免疫吸着検定法)キットが普及しており、簡単、かつ素早く検査が動物病院で可能です。
しかし、感染初期の4~6週間では、このキットでウイルスを検出できません。そのため、もし外で保護した猫を室内で飼育するのであれば、家の中に入れてから4~6週間程度待ってから検査を行ったほうがいいでしょう。また、この検査は細胞外にウイルスが排出されていないと検出ができません。その場合には血液中の白血球からPCR法という検査で猫白血病ウイルスの遺伝子を検出する必要があり、こちらの方が検出感度は高いのですが、一般的な検査ではありません。
猫の白血病の治療にはどんな方法があるの?
免疫不全により皮膚症状や肺炎などの症状が猫に出ている場合には、抗菌薬を使って日和見感染症の原因病原体に対処し、また、ステロイドを投与するといった治療が行われます。このときにインターフェロンを使用すると生存期間と症状に改善が認められたという報告があります。
リンパ腫が生じてしまった場合には、複数種の抗がん剤を周期的に使用する治療が行われますが、猫の胸の中にリンパ腫ができる場合、平均生存期間は3か月程度となり、治療は困難です。
猫の白血病は治せるの?
猫白血病の治療のためには、猫白血病ウイルスを体内から排除したいところです。そのため、いくつかの抗ウイルス薬が用いられてきましたが、残念ながら確実に有効な治療法はまだありません。
なお、免疫力を上げるインターフェロンという薬により、症状が改善する場合があると報告されていますが、こちらも確実な方法ではありません。ただし、感染の初期に体調を崩した場合には、点滴や抗菌薬を投与するという対症療法で完全に持続的な感染を防ぐことが可能な場合が多く見られます。
ただし、この時期に免疫を抑える作用のステロイドを投与すると元気になるので、症状は良くなったように見えますが、持続感染に移行してしまうことがあるので注意が必要です。
どうやって予防したらいいの?
猫白血病ウイルスは、一度感染し発症すると、ウイルスの廃城は困難であるため、治療よりも予防が重要と言えるでしょう。
圧倒的に屋外飼育している猫に感染が多いので、室内飼育にすることが最も良い予防法です。また、猫白血病ウイルスに感染している猫と接触させないようにすることも有効な手段です。もし、猫白血病ウイルスに感染している猫と感染していない猫が同居するのであれば、互いに接触させず、また、フードや水飲み用の容器を完全に分けるべきです。
動物病院では猫白血病ウイルスに対するワクチンを接種することが可能なので、必要な場合には行うといいでしょう。ただし、このワクチンは100%感染を防止できるわけではないことと、10,000に1頭の確率で注射部位に線維肉腫という非常にやっかいな悪性のがんができることがあります。
特に、背中にワクチンを打つと、線維肉腫が発生した場合に手術しても完全に取り除くことが困難になるので、後ろ足に打つといいでしょう。また、完全に白血病ウイルス感染猫と隔離できる、ウイルスに暴露される可能性がないならば、安易に打つことはお勧めしません。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
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