猫の膵炎の症状と原因、治療法について
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
- 猫の膵炎ってどんな病気?
- どうして症状が出るの? 原因は?
- どんな猫が膵炎にかかりやすいの?
- 猫の膵炎の症状とチェック項目
- 猫の膵炎の治療にはどんな方法があるの?
- 症状を緩和するにはどうしたらいいの?
猫の膵炎ってどんな病気?
膵炎とは、膵臓に炎症が起こる病気です。
膵臓の働き
膵臓は、アミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなどの消化酵素を含む膵液を十二指腸へ分泌し、炭水化物や脂肪、たんぱく質といった食べ物の消化を助ける働きをしています。このように、分泌物が作用するところまで導管で導かれている場合を外分泌と言います。
また、インスリンを始めホルモンを分泌することで、血糖値を一定に保つ役割も果たしています。このホルモンのように、導管がなく血中や体液中に分泌される場合を内分泌と言います。
膵炎の症状
何らかの原因により膵臓内の消化酵素が活性化すると、膵臓自体を消化してしまいます。そして、膵臓を傷つけることで炎症が起こり、通常は消化器症状や腹部の痛みを伴います。
また、膵臓のインスリンを分泌する部分に障害を起こし、糖尿病を始め内分泌疾患を併発することがあります。
猫の膵炎の多くは原因不明であり、嘔吐や腹部疼痛などの典型的な症状を示さないことがあるので、動物病院への受診のタイミングが難しい病気のひとつです。
動物病院でも容易に確定診断することは難しく、臨床症状や血液検査、画像検査などにより総合的に判断します。胆管肝炎や炎症性腸疾患(IBD)などを併発する(三臓器炎)こともあり、治療がより困難になるケースもあります。
どうして症状が出るの?原因は?
猫の膵炎の多くは原因不明
猫の膵炎の多くは原因不明です。しかし、寄生虫や感染症、ほかの病気に関連して起こるもの(続発性疾患)、薬剤、外傷によって膵臓がダメージを受け、膵炎を発症する場合があります。
猫の膵炎の原因の具体例
- 寄生虫:トキソプラズマ、吸虫など
- 感染症:猫伝染性腹膜炎(FIP)、猫カリシウイルス、パルボウイルス、ヘルペスウイルスなど
- 続発性疾患:高カルシウム血症、胆管肝炎など
- 薬剤:有機リンやL-アスパラキナーゼなど
- 外傷:交通事故など
ちなみに、犬では、クッシング症候群や甲状腺機能低下症が膵炎の原因のひとつですが、猫には当てはまりません。
どんな猫の膵炎にかかりやすいの?
遺伝的には、在来短毛種やシャム猫が多いとの説がありますが、はっきりとはわかっていません。
犬では、脂肪の多いものをよく食べていたり、肥満だったりすると膵炎にかかりやすくなりますが、猫ではあまり関係ないようです。
猫の膵炎の症状とチェック項目
猫の膵炎の症状としては、次のようなものが挙げられます。
- 食欲が全くないか、落ちている
- 元気がなく、じっとしている(沈鬱)
- 皮膚を軽くつまんで離してみると戻りが悪い(脱水)
- 痩せてきた
- 身体がいつもより冷たい(低体温)
- 嘔吐
- 白目の部分や耳の内側、お腹などが黄色っぽい、あるいは尿の色がいつもより濃い(黄疸)
- 身体がいつもより熱い(発熱)
- お腹をまるめてじっとしている(腹部疼痛)
- 下痢
上記の症状にひとつでも当てはまる場合は、膵炎の可能性がありますので獣医師にご相談ください。
猫の膵炎は症状が表面化しない場合も
ここで注意したいのは、人や犬のように激しい嘔吐や下痢、腹部の痛みを伴うことが猫ではまれだということです。
猫の膵炎は、その多くがはっきりとした症状を示さないので、いつもと様子がおかしいと思ったら早めに動物病院を受診してください。
猫の膵炎はどうやって診断されるの?
血液検査をして、赤血球や白血球などの数値をチェックすることで、貧血や脱水、炎症の程度を調べます。また、血糖値や肝臓・胆道系の数値から糖尿病や胆管炎などの合併症の疑いがないかを調べます。
猫の膵炎に特徴的な血液検査項目としては、血清中の猫膵リパーゼ免疫活性(fPLI)を調べ、高値の場合は膵炎を強く疑います。
そのほかには、腹部エコー検査といった画像検査によって、膵臓の腫大や壊死、膵管拡張、膵臓腫瘍などがないかを調べます。
しかしながら、猫の膵炎は確定診断することが難しく、多くは臨床症状や血液検査、画像検査の結果から総合的に診断されます。
猫の膵炎の治療にはどんな方法があるの?
入院、あるいは通院することによって、静脈点滴や皮下点滴を行い、水分や電解質などの補給をします。また、症状に合わせて痛み止め(鎮痛剤)や吐き気止め(制吐剤)などの投与を行います。
食欲廃絶(食欲がまったくなくなる)の期間が長く、自力で栄養が取れない場合には、一時的に胃瘻チューブや経鼻胃チューブを設置して、給餌をする場合があります。このチューブは体調が回復して自力でごはんが食べられるようになったら外します。
炎症性腸疾患(IBD)や胆管肝炎、糖尿病などの合併症がある場合には、療法食や免疫抑制剤、抗生剤、インスリン投与など、それらに対する治療も行います。 合併症の治療は膵炎からの回復と共に治ることもあれば、経過によっては膵炎が落ち着いた後も治療を続けることがあります。
猫の膵炎は治せるの?
猫の膵炎の予後は、症状の激しさや治療を開始するまでの期間、合併症の有無などの重症度によって異なります。
症状が重く、合併症を併発している急性膵炎の場合、治療が遅ければ多臓器不全により治療困難に至ることがあります。
比較的軽症のものでも、多くは治るまでに数日から数週間の入院や通院による治療が必要になります。
また、合併症の程度によっては生涯に渡る治療が必要になることがあり、慢性膵炎になると急性膵炎を再発する可能性があります。
症状を緩和するにはどうしたらいいの?
猫の様子を日ごろからよく観察し、早期発見、早期治療を心がけることが重要です。
動物病院で膵炎と診断された場合には、根気強く入院や通院による治療を続けてください。合併症によっては内服薬や注射薬の投与、療法食などが必要なことがあります。獣医師の説明をよく聞き、用法容量を守って正しく使用してください。
猫の膵炎は症状が特徴的でなく、ほかの病気でも見られるものやはっきりしないものが多いうえに、確定診断が難しく、重症度や合併症によっては治療が長引くことや、一生付き合っていく可能性がある病気です。
症状が収まり、治ったように見えても慢性化している場合があります。くれぐれも自己判断で通院や治療を途中で止めたりせず、回復後も定期的に検診を受けるようにしてください。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
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