犬が水を飲まない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

犬が水を飲まない原因として、どんな病気があるのでしょうか。また、病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

犬にとっても水分は大切です。犬が水を飲まない背景には、大きな病気が隠れているのかもしれません。愛犬の普段と異なる行動やしぐさに気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬が水を飲まない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬が水を飲まない理由とは?

―犬の水を飲まない原因として、どんなものが考えられますか?

犬が水を飲まなくなる原因としてはいくつかあり、ひとつだけでなく複数の原因によることもあります。原因として考えられるものを項目ごとに説明していきましょう。

体の痛み

犬が体のどこかで痛みを感じているとき、体を動かしたくないために水を飲まなくなると考えられます。この場合、犬が水飲み場まで行きたがらない、もしくは足や首が痛くて器の位置に頭を動かせないなどの行動の変化が見られます。体の痛みについては病気が原因の場合があるので、後ほど病気に関してもご説明します。

老犬のため

水分の要求には筋肉量が関係しており、筋肉量の少なくなる老犬では必要とする水分が成犬や仔犬よりは少なくなります。また、老犬は寝ている時間が長いので、自分から進んで水を飲まなくなる傾向が見られることも原因となるでしょう。

水分量が足りている

犬が水を直接飲まないとしても、実はほかの食事から水分が取れている場合があります。ドライフードはその約10%に水分が含まれており、ウエットフードに関しては約70%に水分が含まれています。そのため、直接水を飲まなかったとしても食事から充分水分が取れているのかもしれません。

ストレス

犬にとって安心できない環境にいると、少なからずストレスを受けている場合があります。このストレスによって自分から進んで水を飲まなくなることがあります。不安でじっとしていて、水を飲むことなく過ごしてしまうのです。

気温や気候の変化

人間と同じく、犬でも気温が高く暑いときには飲水量が多いのですが、逆に気温が低くなると飲水量は減っていきます。また、舌を出してハアハアと呼吸することも少なくなるので、唾液からの蒸散(体内の水分が水蒸気となって体外に発散すること)がなくなり、夏場ほどは飲水しなくなるのです。

これらのほか、何らかの病気が原因で、犬が水を飲まないことがあります。

犬が水を飲まない原因として考えられる病気とは?

犬が水を飲まない原因として考えられる病気とは?

犬が水を飲まなくなる病気

―犬が水を飲まない原因としてどんな病気が考えられますか?

口内の異常

まずは、飲水するための口に異常がある場合です。歯周病であったり、口の周囲に腫瘍があったりして、痛みや異常があると水を飲めなくなると考えられます。

体の痛み

ほかには、体の痛みがある原因として、外傷や椎間板ヘルニア、頸椎の亜脱臼などが挙げられます。腰や首が痛くなり、飲水する態勢が取れなくなると、飲水量が減ると考えられます。

内臓の病気

さらに、犬に肝臓病や腎臓病など内臓の病気があり、それが進行して、かなり状態が悪くなると、ぐったりして水を飲むことすらできなくなります。

愛犬が水を飲まない! こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらないケース

―水を飲まない期間が何日間くらいなら、様子を見ていていいですか?

水を飲まなくても、普段どおり食事をしっかり取れているのであれば、ほとんど心配はいりません。夏の暑い時期でなければ、2、3日は様子を見ていてもいいでしょう。

受診を強く勧めるケース

―水分不足が原因で緊急を要する症状について詳しく教えてください。

犬も水分が不足すると、人と同じく脱水が起こります。軽度であれば飲水や食事の摂取で回復すると思われますが、過度の脱水が起こると動けなくなりぐったりしてきます。

犬の脱水症状の見極め方

脱水症状の見極め方は、以下のとおりです。

  • 体の皮膚がいつもより硬く感じる
  • 鼻や舌(口の中全体)がかなり乾いている感じがする
  • 目が乾いて目やにが出る

愛犬の皮膚が硬く感じるときには、背中の皮膚を指で少しつまんでみてください。そして、つまんだ皮膚を離した際に、つまむ前の状態に戻るまでの時間が2~3秒以上かかるようであれば、かなり脱水していると判断していいでしょう。

愛犬が水を飲まない! こんな症状ならすぐ病院へ

脱水症状は放置してはいけない

脱水症状を放置してしまうと、心臓への負担が大きくなり、ショック症状を起こして生死にかかわる場合があります。また、肝臓や腎臓などの臓器にも影響が出て、多臓器不全を起こすこともありますので、あまり様子を見すぎないようにしてください。

―受診時に気を付けなければいけないことはありますか?

愛犬がかなり脱水していると思われるときには、「水を何日間飲んでいない」といった飲水に関する情報を獣医師に直接伝えられるようにするといいでしょう。また、緊急性が高い場合があるので、病院に着いたら症状を的確に伝え、早めに対処してもらえるようにするといいかもしれません。

犬の飲水量について

犬が一日に必要な水の量

―健康な犬が一日に飲む水の量について教えてください。

犬にとって水分は、体の約60%を占めており、人と同じく生きるうえで大切なものです。その水分量を維持するためには、通常、口から摂取するしか方法はありません。

成犬が健康でいるために必要な一日あたりの水分量は、以下のふたとおりの計算式で算出されます。

  1. 体重(kg)の0.75乗×132(ml)
    ※「体重の0.75乗」は、電卓で体重×体重×体重の値に√(ルート)を2回押すと計算できます。
  2. 体重(kg)×50~70(ml)

例えば、体重が5kgの犬では、1.の計算式を使うと441mlとなります。また、2.の計算式はさらに簡単で、250~350mlと算出されます。ただし、あくまでも目安量を把握しておくためのものなので、摂取しなければいけない厳密な量ではありません。普段の飲水量と比較しながら、適正であるかを判断していきましょう。

犬の飲水量の測り方

―飲水量を測るには、どうしたらいいですか?

まずは、愛犬の体重を計りましょう。これに、先ほど説明した飲水量の計算式に当てはめて、愛犬の一日あたりの飲水量を計算します。

この計算した量を目安にしながら、一日24時間の間で器に入れる水の量を計量カップで計算しながら入れていきます。24時間経過した時点で残っている水の量を計量し、器に入れた分の水から残った水の量を引けば、一日の飲水量が計算できます。そうすれば、目安とした計算量と実際の飲水量にどのくらいの差があるのか、多いのか少ないのかが自ずとわかります。

犬の水の飲ませ方、水分不足の予防法

犬の水の飲ませ方、水分不足の予防法

愛犬に食事から水分を取らせよう

―普段の生活で、愛犬にきちんと水を飲ませるには、どうしたらいいですか?

愛犬がなかなか水を飲んでくれないときには、食事から水分を取らせるのが一番やりやすい方法です。普段ドライフード中心の食事であれば、ぬるま湯でふやかしたり、鶏肉や野菜を煮出したスープをかけたりすると、愛犬が喜んで食べてくれることがあります。また、ドライフードに缶詰のようなウエットフードを混ぜるか、完全にウエットフードに切り替えるのもいいと思います。

ただし、水分が多めのご飯にすると、歯石が付きやすくなるため、歯磨きをして歯石予防をしてあげましょう。

もし、ウエットフードを普段から食べているのに水を飲まないようであれば、スポイトのようなもので少しずつ口に入れてあげるといいでしょう。

愛犬のおおよその飲水量を把握しよう

―飼い主がしてしまいがちな水の飲ませ方で良くないことはありますか?

愛犬の飲水量が測れない場合です。例えば、蛇口から直接水を飲ませると、実際どのくらい水を飲んだのかがわかりません。また、水おけやボウルにためている水を愛犬が飲む場合も量がわからないことがあります。

正確ではなくてもいいのですが、おおよそ毎日どのくらいの水を飲んでいるのかを把握しておいたほうがいいでしょう。

まとめ

犬が水を飲まないときには、生理的なものや環境要因で飲まないことが多くあります。そのため、病気なのか否かを判断するため、普段から愛犬の様子を観察し、飲水量を把握しておくことが大切です。水を飲まないからといって一概に焦る必要はありませんが、新鮮な水をいつでも飲める環境は作ってあげてください。

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
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カ行
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サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。