犬の耳血腫の症状と原因、治療法について
最終更新日:2024年07月09日
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犬の耳血腫の症状
犬の耳介(じかい:一般的に耳と呼ばれる部分)は、耳の一番外側のヒラヒラしている部分です。薄い耳介軟骨の周りを、皮膚で挟んだような構造をしています。
犬の耳血腫は、耳介の皮膚内の血管が破れて皮膚と耳介軟骨の間に血がたまり、耳が腫れる病気です。耳血腫を発症すると、以下のような症状が見られます。
- 耳が腫れる
- 頭を振る
- 耳を頻繁にかく
- 耳が熱をもっている
犬の耳血腫は、耳や行動に初期症状や変化が現れるので、飼い主さんが気付きやすい病気です。
こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診
耳血腫は命にかかわる病気ではありませんが、治療せずに放置すると、耳が変形して激しい痛みが出るおそれがあります。また、最悪の場合、耳の一部が壊死してしまうおそれがあるため、耳血腫と思われる症状が見られたら、なるべく早く動物病院を受診しましょう。
犬の耳血腫の原因
犬が耳血腫を発症する原因は、頭を激しく振ったり、耳を頻繁にかいたりといった、耳介への外的な刺激(摩擦・圧迫・打撲など)だと言われています。特に、外耳炎や中耳炎などの病気が原因となって発症する事例が多く見られます。
耳血腫を引き起こす病気
- 外耳炎(細菌感染、真菌感染、耳ダニの寄生、アレルギー、異物など)
- 中耳炎
- 外傷(打撲、かみ傷など)
人間の場合、耳に外的刺激がかかりやすい柔道や相撲といったスポーツをする方が耳血腫(耳介血種、柔道耳)を発症する傾向があります。犬の場合、外耳炎を原因とするケースが多く見られます。外耳炎は耳のかゆみを伴うため、犬は激しく頭を振ったり、しきりに耳をかいたりして耳に刺激が加わり、耳血腫になりやすくなります。
ただし、外耳炎が必ずしも耳血腫を引き起こすとは限りません。アレルギー疾患や自己免疫性疾患、血液の凝固異常などの素因をもっている犬は、耳血腫を発症しやすい傾向にあります。
耳血腫にかかりやすい犬の特徴は?
耳血腫にかかりやすい犬種は、大きな耳介を持つ中~大型犬です。これは広い耳介軟骨ほど壊れやすく、さらに耳介が大きいほど頭を振ったときにかかる力が強いことから、耳血腫になりやすいと考えられています。
特に、ビーグルやゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、アメリカン・コッカー・スパニエルといった垂れ耳の犬は注意しましょう。
性別による発症の差はなく、5歳以上の中~高年齢の犬に多く見られます。ただし、どの犬種でも耳血腫を発症する可能性はゼロではありません。外耳炎になりやすい特徴がある犬や、これまでに耳血腫を発症したことがある犬は、特に注意が必要です。
犬の耳血腫の治療法
検査内容
- 視診
- 触診
- 穿刺検査(せんしけんさ)
犬の耳血腫は、耳の腫れ方に特徴があるため、視診と触診で診断ができます。
耳介の中にたまっている液体の成分を確認するために、注射器で抜いた液体を顕微鏡で観察する「穿刺検査」を必要に応じて行います。また、犬に外耳炎が疑われる場合には、耳鏡検査や耳垢検査(じこうけんさ)などを実施します。
治療法
犬の耳血腫の治療法には、注射器を使った処置と手術を行う外科的治療、薬による内科的治療があります。
注射器を使った処置
犬の耳介の腫れている部分に注射器の針を直接刺して、たまっている液体を抜く治療です。場合によっては、たまった液体を抜いた後に耳介の中に直接ステロイド剤などを注入します。
ただし、数日たつと再び液体がたまってしまうため、くり返し液体を抜いたり、耳介を圧迫するように包帯を巻いたりします。
外科的治療
注射器を使った処置でも良くならない場合には、外科的治療を行います。「パンチ皮膚生検器」と呼ばれる器具を使って耳介の皮膚にいくつか穴を開けたり、メスで犬の耳介の皮膚を切開したりして、たまった液体を抜いたあとに縫って閉じます。
内科的治療
注射器での処置や外科的治療の補助として、ステロイド剤を用いて治療を行います。また、外耳炎を始めとするほかの病気が原因の場合、耳血腫とあわせてその治療もします。
無治療の場合
人間の耳血腫の場合、冷やすと腫れが引いて痛みが緩和されるため、愛犬に試される飼い主さんもいらっしゃいます。しかし、冷却はあくまでも応急処置であり、耳血腫そのものは治りません。また、犬が冷やす処置を嫌がって頭を振り、逆効果になる場合もあるため、獣医師の指示がないときは冷やすのを控えましょう。
犬の耳血腫は、きれいに自然治癒するのは難しいと言われています。治療せずに放置すると、耳介が硬く厚くなったり、耳介が変形したりするなど悪化のおそれがあります。そのため、犬の耳血腫は初期段階での早期治療が大切です。愛犬の耳が腫れていたら、自宅治療は考えず、早めに動物病院を受診しましょう。
犬の耳血腫の予防法
定期的に愛犬の耳掃除を行うと、耳血腫の予防になります。
犬の場合、外耳炎が原因で耳血腫を発症するケースが多いため、外耳炎にも気を付けましょう。寄生虫性、細菌性、マラセチア(真菌の仲間)性など、どのタイプの外耳炎でも、常に耳の中を清潔に保つことが予防に有効です。
ただし、耳掃除のやり方を間違えると、犬の耳の中を傷付けて、かえって外耳炎を引き起こす可能性があります。動物病院やサロンで、正しい耳掃除の方法を教わったり、うまくできない場合はプロに依頼したりして、愛犬を耳の病気から守りましょう。
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犬の耳の病気
犬種別の保険料
- 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
- ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
- 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
- アーフェンピンシャー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- アイリッシュ・セター
- 秋田
- アフガン・ハウンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- アメリカン・ピット・ブルテリア
- アメリカン・フォックスハウンド
- アラスカン・マラミュート
- イタリアン・グレーハウンド
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セター
- イングリッシュ・ポインター
- ウィペット
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
- ウェルシュ・テリア
- エアデール・テリア
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オーストラリアン・シルキー・テリア
- オーストラリアン・テリア
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カ行
- カーリーコーテッド・レトリーバー
- 甲斐
- カニーンヘン・ダックスフンド
- キースホンド/ジャーマン・ウルフスピッツ
- 紀州
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- キング・チャールズ・スパニエル
- グレート・デーン
- グレート・ピレニーズ
- グレーハウンド
- ケアーン・テリア
- ケリー・ブルー・テリア
- コーイケルホンディエ
- コーカサス・シープドッグ
- ゴードン・セター
- ゴールデン・レトリーバー
- コリア・ジンドー・ドッグ
- コリー
サ行~ナ行
サ行
- サモエド
- サルーキ
- シー・ズー
- シーリハム・テリア
- シェットランド・シープドッグ
- 四国
- 柴(小柴・豆柴も含む)
- シベリアン・ハスキー
- シャー・ペイ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ジャーマン・ポインター
- ジャイアント・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア
- スカイ・テリア
- スキッパーキ
- スコティッシュ・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
- スタンダード・シュナウザー
- スタンダード・ダックスフンド
- スタンダード・プードル
- セント・バーナード
タ行
- ダルメシアン
- ダンディ・ディンモント・テリア
- チェサピーク・ベイ・レトリーバー
- チベタン・スパニエル
- チベタン・テリア
- チベタン・マスティフ
- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
- チャウ・チャウ
- チワワ
- 狆(ちん)
- トイ・プードル
- トイ・マンチェスター・テリア
- ドーベルマン
- ドゴ・アルヘンティーノ
- 土佐
ナ行
- ナポリタン・マスティフ
- 日本スピッツ
- 日本テリア
- ニューファンドランド
- ノーフォーク・テリア
- ノーリッチ・テリア
ハ行~ワ行・その他
ハ行
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- パグ
- バセット・ハウンド
- バセンジー
- パピヨン
- ハリア
- ビアデッド・コリー
- ビーグル
- ビション・フリーゼ
- ブービエ・デ・フランダース
- プーミー
- プーリー
- プチ・バセット・グリフォン・バンデーン
- プチ・バラバンソン
- フラットコーテッド・レトリーバー
- ブリタニー・スパニエル
- ブリュッセル・グリフォン
- ブル・テリア
- ブルドッグ
- ブルマスティフ
- フレンチ・ブルドッグ
- ペキニーズ
- ベドリントン・テリア
- ベルジアン・シェパード・ドッグ
- ボーダー・コリー
- ボーダー・テリア
- ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ
- ボクサー
- ボストン・テリア
- 北海道
- ポメラニアン
- ポリッシュ・ローランド・シープドッグ
- ボルゾイ
- ボロニーズ
- ホワイト・シェパード・ドッグ
マ行
- マスティフ
- マルチーズ
- マンチェスター・テリア
- ミディアム・プードル
- ミニ・オーストラリアン・ブルドッグ
- ミニチュア・シュナウザー
- ミニチュア・ダックスフンド
- ミニチュア・ピンシャー
- ミニチュア・プードル
- ミニチュア・ブル・テリア
ヤ行
ラ行
- ラージ・ミュンスターレンダー
- ラサ・アプソ
- ラブラドール・レトリーバー
- レークランド・テリア
- レオンベルガー
- ローデシアン・リッジバック
- ロットワイラー
ワ行
ミックス犬(※1)
- 8か月未満:6kg未満
- 8か月以上:8kg未満
- 8か月未満:6kg以上~20kg未満
- 8か月以上:8kg以上~25kg未満
- 8か月未満:20kg以上
- 8か月以上:25kg以上
※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。