犬の中耳炎の症状と原因、治療法について

犬の中耳炎の症状

犬の中耳炎の症状と原因

犬の耳は、「外耳」「中耳」「内耳」と大きく3つに分けられます。

犬の外耳は、人間とは異なりL字の構造をしていて、耳の穴の奥は、垂直耳道と水平耳道という管状の構造を経て鼓膜へとつながります。耳介からこの鼓膜までを「外耳」と言います。

中耳とは、鼓膜から奥の領域であり、鼓膜のほかに鼓室胞(こしつほう)、耳小骨(じしょうこつ)、耳管から成り立っています。

内耳は、外耳と中耳から伝わった音の振動を電気信号に変換して聴覚として脳に伝える蝸牛(かぎゅう)と、平衡感覚をつかさどっている前庭や半規管で構成されている部分です。

中耳で炎症が起こる病気を中耳炎と言います。中耳炎を発症した際は、以下のような症状が犬に現れます。

  • 耳を擦り付ける、後ろ足でかゆがる
  • 頭を繰り返しぶるぶると振る
  • 耳を触られるのを嫌がる、痛がる
  • 耳から臭いがする
  • 耳だれ(耳漏)

外耳炎を併発している場合、耳の内側に赤みが出たり、炎症による腫れが原因で耳の穴が狭くなったりといった症状が犬に現れます。また、耳の汚れが増える場合もあります。

こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診

以下のような症状が犬に現れている場合は、炎症が悪化している可能性があるため、すぐに動物病院を受診しましょう。

  • 眼球が揺れている
  • 左右の顔で顔つきが違う
  • 眼の表面に薄い膜が飛び出してきている
  • 首が傾いている

中耳炎が進行すると、内耳まで炎症が広がり、内耳炎を引き起こすおそれがあります。 犬の内耳は聴覚だけでなく、平衡感覚にもかかわっているため、眼球が揺れ動く(眼球振盪:がんきゅうしんとう)、首が傾く(捻転斜頸:ねんていしゃけい)などの症状が出る可能性があります。

炎症が重度になると、中耳を通る神経が炎症の影響を受けて、犬の口唇(こうしん:くちびる)が垂れ下がったり、まぶたがうまく動かなくなったりなどの顔面神経麻痺(がんめんしんけいまひ)の症状が現れます。

眼にかかわる交感神経が障害を受けると、ホルネル症候群と呼ばれる病態につながる場合があります。ホルネル症候群になると、犬の眼の内側に薄い膜(瞬膜)が飛び出す、瞳孔が小さくなる、まぶたや眼球が落ちくぼむといった症状が現れます。また、けいれん発作や異常呼吸を引き起こす髄膜脳炎(ずいまくのうえん)を発症する可能性もあります。

愛犬に思い当たる症状がある場合は、できるだけ早く動物病院を受診してください。

犬の中耳炎の原因

犬の中耳炎は、さまざまな要因で発生する可能性がある病気です。外耳炎を始めとするほかの病気からの誘発、細菌やカビ(真菌)の感染、植物の種といった異物が耳に入って炎症が引き起こされる場合もあります。

中耳炎を引き起こす可能性のある病気

  • 外耳炎
  • 耳ダニ(ミミダニ)を始めとする寄生虫感染
  • アレルギー性疾患
  • 耳の中の腫瘍

中耳炎の症状以外にも気になる症状がある場合は、獣医師に相談してください。

中耳炎になりやすい犬の特徴は?

中耳炎にかかりやすい特徴をもっているのは、次の犬種です。

  • キャバリア
  • コッカー・スパニエル
  • ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
  • 柴犬
  • フレンチ・ブルドッグ
  • シー・ズー

中耳炎は、外耳炎が原因で起こる場合が多いため、外耳炎になりやすい犬は中耳炎にも注意が必要です。特に、垂れ耳や耳が長い犬種は、耳の中の通気性が悪く細菌が繁殖しやすいため、外耳炎・中耳炎になりやすい傾向にあります。

また、柴犬はアレルギー性疾患を始めとする皮膚トラブルが起きやすく、キャバリアは原発性分泌性中耳炎(中耳自体の問題で炎症が起こる疾患)を発症しやすい犬種です。

犬の中耳炎の治療法

犬の中耳炎の治療法と予防法

検査内容

耳鏡検査

耳の中の炎症や耳垢の状態を確認します。

耳垢(みみあか)検査

細菌・真菌・寄生虫がいないかを確認します。

レントゲン検査

耳の周囲の組織・骨に異常がないかを確認します。

専門的な設備が整っている病院では、オトスコープ(耳専用の内視鏡)による検査、治療が可能です。耳道や鼓膜の様子を確認したり、耳内部の洗浄や異物を除去したりできます。

治療法

軽度~中程度の中耳炎の治療

基本的に内科的治療を行います。犬の中耳炎の原因によって以下の薬の処方を行います。

  • 細菌感染の場合:抗生剤の内服薬や点耳薬
  • 真菌の場合:抗真菌薬
  • 寄生虫の場合:駆虫薬

重度の中耳炎の治療

内科的治療だけでなく、全身麻酔をかけて外科的治療を必要に応じて犬に実施します。外耳道の切除や、鼓膜を切開し洗浄するといった外科手術になります。

無治療の場合

犬の中耳炎を治療せずに放置すると、奥の内耳まで炎症が広がったり、炎症が悪化したりする可能性が高くなります。また、中耳がダメージを受けることで難聴になる場合や、さらに炎症が悪化して命にかかわる髄膜脳炎といった病気につながる場合があるため、必ず動物病院を受診してください。

犬の中耳炎の予防法

中耳炎を予防するためには、きっかけとなる外耳炎が起きないように心がけましょう。犬の耳を清潔に保っておくと、外耳炎の予防になります。自宅で犬の耳のケアを行う際は、耳に強い刺激を与えないように気を付けてください。

綿棒の使用は避け、やわらかいコットンで指の届く範囲をきれいにしてあげましょう。耳の穴の中まで毛が密に生えている場合は、トリミングや動物病院で毛を抜いてもらうと、耳の通気性が良くなり、細菌や真菌などの感染予防につながります。

外耳炎になった場合でも、炎症が広がっていない早期に治療すれば、中耳炎の発症を防げます。愛犬が耳を気にしている素振りがないか、耳の臭いに変化はないか、耳の内側が赤くなってないか、耳垢が増えていないかなど、日常生活での変化にきちんと気付いてあげると、外耳炎の早期発見になり、中耳炎から愛犬を守れるでしょう。

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犬の耳の病気

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。