犬のしゃっくりが止まらない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医師が解説

最終更新日:2024年03月01日

犬も人ほど多くはありませんが「しゃっくり」をします。しかし、愛犬のしゃっくりが、ずっと止まらない、呼吸が苦しそうなら何かの病気のサインかもしれません。愛犬のしゃっくりが続き、様子がおかしい場合の病院に連れて行くタイミング、予防や対処法などを獣医師さんに伺ってみました。

そのうち治るだろうと思っていたら、病状が悪化し、取り返しのつかない事態になってしまうかもしれません。気になることがあれば、すぐに獣医師さんに相談しましょう。

犬のしゃっくりが止まらない原因とは?病院に連れて行くべき症状を獣医が解説

犬のしゃっくりの原因とは?

犬がしゃっくりをする体内メカニズムとは?

―犬がしゃっくりを起こす原因について教えてください。

人では比較的よく経験する「しゃっくり」。しゃっくりは体の中の胸部と腹部を仕切っている横隔膜のけいれんにより引き起こされ、横隔膜がけいれんすると同時に声帯が閉じて、空気の流入が阻止されることで、「ヒクッ」という音が出ます。このような現象から医学用語で「吃逆(きつぎゃく)」と呼びます。

犬の場合、しゃっくりは人ほど多く見られないものの、胸部や腹部の構造は似ているため起こりえます。

犬がしゃっくりをしていたら、かわいらしいとほほえましく思われるかもしれませんが、原因によっては病気の前兆や症状の表れであることも否定できないため注意が必要です。

―愛犬がしゃっくりのようなものをするのですが、これは何でしょうか?

飼い主さんが見て感じる犬の「しゃっくり」は、本当のしゃっくりである以外にも似たような症状を示す現象もあります。

しゃっくり以外には、咳やくしゃみ、また逆くしゃみという鼻をすするような音を鳴らすしぐさである場合もあります。いわゆる「口から出る音」に対しては、しゃっくりだけではないことから、それが何かを特定するためにその様子を動画に録って、獣医師さんに診てもらったほうがいいでしょう。

犬がしゃっくりを起こす原因とは?

―犬のしゃっくりの原因として、どんなものが考えられますか?

早食いによるしゃっくり

食欲が旺盛で若い子であれば、ものの数十秒で用意したフードを完食してしまうことがあるでしょう。特に、胃に入った後、胃の中で急速に膨張するドライフードのようなものを食べると、胃が膨らみ横隔膜が押されます。その刺激によって横隔膜がけいれんし、しゃっくりを引き起こすことがあります。

犬のしゃっくりの原因とは?

フードの問題によるしゃっくり

食べ物が冷たかったり逆に温かかったりすると、その温度によって犬の食道から胃にかけて筋肉の収縮が起こることがあります。その消化管の収縮から横隔膜にも影響を及ぼして、けいれんが起こる場合があります。

また、フード自体がその犬に合っていない場合では、消化時間が長くなったり、ガスが発生しやすくなったりして胃腸が圧迫されることも要因になります。

不安や興奮、ストレスによるしゃっくり

環境の変化や気候の変化でも犬の体にはストレスがかかります。それによって横隔膜が収縮し、けいれんしてしゃっくりを引き起こすことがあります。

また、外的な要因だけでなく、急にお留守番で飼い主から離れ、心理的な不安が起こると、自律神経のバランスが崩れて内臓の筋肉の収縮が起こりやすくなります。

肥満によるしゃっくり

犬が肥満傾向になると、喉元や内臓の脂肪量が多くなり、内臓を圧迫することがあります。それにより横隔膜も圧迫され、しゃっくりにつながることがあります。

このほか、何らかの病気が原因で、犬がしゃっくりをする場合があります。

犬のしゃっくりの原因として考えられる病気とは?

―犬がしゃっくりを起こす原因としてどんな病気が考えられますか?

犬のしゃっくりは、すぐに病気と結び付けられるものではありませんが、下記のように病気が原因でしゃっくりが起こる場合もあるため、注意が必要です。しゃっくりが止まらない、けいれんなどほかの症状を伴う場合は、様子を見ずに獣医師に診てもらいましょう。

呼吸器系の病気

呼吸器の異常が原因になっているものとして、気管支炎、肺炎、喘息、肺腫瘍、胸膜炎といった炎症を伴う胸腔内の病気が考えられます。

心臓の病気

心臓病による心臓肥大や心膜炎、心タンポナーデ、心臓腫瘍など、心臓が大きくなることで横隔膜を刺激する場合があるため、これらが引き金となって犬がしゃっくりを引き起こすことがあります。

犬のしゃっくりの原因として考えられる病気とは?

消化器官の病気

嘔吐を引き起こしたり、胃が膨張したりするなどの変化が起こる場合に、犬の横隔膜を刺激することがあります。病気としては、胃炎、胃腫瘍、胃拡張・胃捻転症候群などが考えられます。

脳の病気

脳の病気では、てんかん発作が起こった場合に、症状のひとつとしてしゃっくりが見られることがあります。そのため、てんかんを引き起こす脳腫瘍や脳炎なども気を付けておくべき疾患でしょう。けいれんを始め、てんかんと思われる症状が見られるようなら要注意です。

犬のしゃっくりで、こんな症状ならすぐ病院へ

心配のいらない犬のしゃっくりの症状

―人間の場合、しゃっくりが出てもそのうち治まることがほとんどですが、犬のしゃっくりはどうですか?

人のしゃっくりと同じく、犬でも多くの場合は一過性のもので心配がいらないでしょう。

しかし、しゃっくりが数時間も止まらなかったり、何日にもわたって頻回にしゃっくりが出たりするなど、症状が繰り返される場合には単純なしゃっくりではなく、何らかの病気の可能性があります。

受診を強く勧める犬のしゃっくりの症状

しゃっくりが1時間以上止まらない、呼吸が荒い場合は注意

―受診すべきしゃっくりの見分け方、併発するそのほかの症状を教えてください。

もし、しゃっくりをしていても1時間以上治まらない場合や、呼吸が苦しそうな場合は様子を見ず、動物病院を受診したほうがいいでしょう。

ハアハアするといった呼吸が荒い場合は、呼吸器や心臓病を原因とする症状の可能性があり、放置すると急変して呼吸が止まることも考えられます。

犬のしゃっくりの止め方について

愛犬をやさしくなでて落ち着かせる

―病的でない犬のしゃっくりの止め方を教えてください。

犬のしゃっくりの原因が早食いやフードの内容による場合には、背中をさするように、やさしくなでてあげて、落ち着かせるようにするといいでしょう。また、犬がしゃっくりをし始めると、自分自身を落ち着かせることができない場合があります。そんなときも、飼い主がやさしくなでることで治まることがあります。

犬のしゃっくりの止め方について

そのほかの場合は、少しだけ水を飲ませたり、喉越しのいいヨーグルトのような食べ物を食べさせてあげたりすると落ち着く場合があります。

家庭でできる犬のしゃっくりの予防法

―予防法や飼い主が日ごろから気を付けるべきことを教えてください。

犬のしゃっくりの原因が早食いやフードの内容にある場合には、食事の1回量を少なく調節してあげるといいでしょう。また、気候や温度が原因になっているようであれば、過度な乾燥や湿度に気を付けながら、飼育している場所の温度を25度くらいにするのが適正です。

いずれにしても、愛犬がストレスなくリラックスして過ごせる環境を整えてあげることが大切です。

まとめ

犬のしゃっくりは、人ほど頻繁に遭遇するものではありませんが、もし愛犬がしゃっくりのようなものをしていたら、まずはよく観察することが大切です。日ごろから普段の健康な状態を把握していれば、しゃっくりが出た時にも、元気なのか、いつもと違って様子がおかしいのかを感じ取ることができるはずです。

もし、いつもと様子が違うと感じる場合には、遠慮せずに獣医さんに相談しましょう。

そのほか気になる犬の体や行動の異常・変化については、獣医師監修の「犬の症状」を併せてご覧ください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。