犬がチョコレートを食べたときの症状と応急処置を獣医師が解説

最終更新日:2024年02月22日

チョコレートは、犬が食べると中毒を引き起こしてしまう危険なものです。愛犬がチョコをなめてしまった、食べてしまった場合、どんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。

犬がチョコレートを食べたときの症状と応急処置を獣医師が解説

犬がチョコレートを食べると引き起こされる症状

チョコレートの成分「テオブロミン」が犬に中毒症状を引き起こす

チョコレートの主原料であるカカオ豆には、「テオブロミン」という物質が含まれています。これはチョコレートの苦みの成分で、人間にはリラックス効果やダイエット効果などの良い効果をもたらします。

しかし、犬はこのテオブロミンを体内で分解する能力が低いため、中毒を引き起こしてしまうのです。このテオブロミンは、カカオ豆に含まれている成分で、チョコレートだけでなく、カカオパウダーにも含まれています。そのため、これらを使ったお菓子やアイスクリーム、飲み物などは、チョコレート中毒を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

犬がチョコレートを食べたかも!? こんな症状が見られたら病院へ

数時間から半日ほど経ってから中毒症状が現れる

中毒症状はチョコレートを食べた直後に現れるのではなく、一般的には4、5時間から半日ほど経って症状が現れます。

犬のチョコレート中毒の初期症状

  • 嘔吐(おうと)
  • 下痢
  • 失禁
  • 落ち着きがなくなる

犬のチョコレート中毒の深刻な症状

さらに症状が進行すると、以下のような症状が見られ、死に至る場合もあります。

  • 震え
  • 頻脈(心拍数が増加している状態)
  • けいれん(痙攣)

犬にとって危険なチョコレートの摂取量

犬にとって危険なチョコレートの摂取量

犬がチョコレートをなめた、少量を食べてしまったらどうなるの?

犬がチョコレートを口にしてしまったからといって、必ずしも中毒を起こすわけではありません。チョコレートの種類や犬の個体差によって、中毒症状が出たり出なかったりする場合があるのです。そのため、犬がチョコレートをなめた、あるいは少量を食べたという程度であれば、まったく症状が出ないケースも少なくありません。1日たって犬に何も症状が出ないのであれば、特に治療の必要がない場合がほとんどです。

犬にとって危険なチョコレートの摂取量

ASPCA APCC(The American Society for the Prevention of Cruelty to Animals Animal Poison Control Center)のデータ(参考文献:Chocolate intoxication S Gwaltney-Brant - Vet Med, 2001 - aspcapro.org)によると、テオブロミンの致死量は犬の体重1kgあたり100~200mgだと言われています。

犬にとって危険なチョコレートの量とテオブロミン摂取量による犬の症状

ただし、致死量に至らずとも、テオブロミンの摂取量が犬の体重1kgあたり20mgで軽度の症状が、40~50mgで重度の症状が見られ、60mgでけいれんが起こるとされています。

犬の体重1kgあたりのテオブロミン摂取量による症状

  • 20mgで軽度の症状
  • 40~50mgで重度の症状
  • 60mgでけいれんが起こる

ちなみに、テオブロミンの含有量はチョコレートの種類によって異なります。1gあたりのテオブロミン含有量は、商品によっても異なりますが、おおよそ以下のとおりです。

テオブロミン含有量の目安

  • ココアパウダー:5~20mg
  • ビターチョコレート:5mg
  • ミルクチョコレート:1~2.5mg
  • ホワイトチョコレート:0.05mg

小型犬がミルクチョコ1枚を食べると重度の中毒症状の可能性

これらを踏まえると、体重3kgの小型犬の場合、ミルクチョコレートの板チョコ(50~60g)であれば1枚、ビターチョコレート(ブラックチョコレート)の板チョコであれば半分を食べてしまうと、重度の症状が見られる可能性があります。

犬がチョコレートを食べてしまったときの応急処置

犬がチョコレートを食べてしまったときの応急処置

家庭内ですべき応急処置、対処法

愛犬が食べたチョコの種類と量を確認して、すぐに病院へ

犬がチョコレートを食べてしまった場合、基本的に自宅でできる応急処置はありません。そのため、まずは食べたチョコレートの種類と量を確認しましょう。テオブロミンの摂取量が犬の体重1kgあたり20mgを超える場合は、症状がなくても速やかに動物病院を受診してください。

最低24時間、愛犬をよく観察すること

テオブロミンの摂取量が少量であれば、犬に中毒症状が現れる可能性は低いですが、中毒症状が出るまでには時間がかかります。そのため、最低でも24時間は愛犬の様子をよく観察しましょう。

家庭内でチョコレートを無理に吐かせようとしてはだめ

量にかかわらず愛犬がチョコレートを食べてしまった場合、食塩やオキシドールなどを使用して吐かせようとする方がいます。しかし、これらは逆に犬の健康に害を及ぼす可能性がありますので、絶対に使用しないでください。

愛犬の急なトラブルに、24時間365日、獣医師が電話で直接サポート

ペットメディカルサポート株式会社のペット保険「PS保険」では、24時間365日、獣医師による電話相談サービス「獣医師ダイヤル」を提供しています。愛犬のお困りごとがありましたら、いつでも獣医師に相談できます。

病院での対処法

催吐処置や胃洗浄を行う

病院では、犬がチョコレートを食べてからあまり時間が経っていない場合、吐かせる処置(催吐処置)を行います。犬に吐かせることが難しい場合や中毒を引き起こすほどの量を食べてしまった場合などには、胃洗浄を行うことがあります。

また、テオブロミンには解毒剤はありませんので、中毒症状が出た場合であっても、点滴や吐き気止めの投与といった対症療法が行われます。

催吐処置を行う場合は合計で1万円ほど、胃洗浄を行う場合は2万5,000円ほどかかります。

こちらの診療費は参考例です。平均や水準を示すものではありません。診療費は病院によって異なります。

まとめ「犬にチョコレートを食べさせてはいけない」

チョコレートは非常に身近な食べ物であるため、家庭内で犬が誤食し、チョコレート中毒を起こすケースは少なくありません。チョコレートの種類や犬の体重によっては、少量でも重篤な中毒症状を示す場合もあるため、注意が必要です。チョコレートは愛犬が届かない場所に保管し、万が一食べてしまった場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

愛犬に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「犬が食べてはいけない危険な食べ物」「犬が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。

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犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。