犬が人間用のチーズを食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

最終更新日:2024年07月08日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

チーズは、犬が食べられるものですが、含まれる塩分によって食べすぎると中毒を引き起こしてしまう可能性があります。愛犬がチーズを食べすぎてしまった場合、どんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。

犬が人間用のチーズを食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

犬がチーズを食べても大丈夫。ただし、注意は必要

―犬にチーズを与えても問題ありませんか?

チーズには犬にとって有害な成分は含まれていないため、犬がチーズを食べること自体は問題ありません。チーズはタンパク質やミネラル、ビタミンなどを豊富に含む栄養価の高い食品です。そのため愛犬におやつとして与えたくなると思いますが、「人間用のチーズ」を犬に与える場合にはいくつかの注意点があります。

犬が人間用チーズを食べると引き起こされる症状

犬が人間用チーズを食べると引き起こされる症状

チーズの過剰な塩分が犬に食塩中毒を引き起こす

―チーズは栄養価が高いのに、どうして犬に与えるとき、注意が必要なのですか?

チーズは、各成分の含有量や割合に偏りがあることから、一度にたくさん与えたり、習慣的に与え続けたりすることは、犬の健康維持にとって悪影響を及ぼす可能性があるのです。

塩分過多

種類にもよりますが、チーズには多くの塩分が含まれており、犬にとって塩分過多になりやすい食品です。

例えば、プロセスチーズの場合100g中の食塩相当量は2.8gなので、ひと切れ(20g)で0.56gの塩分です(日本食品標準成分表2015年版(七訂))。成犬が一日に必要な食塩の最低量は体重1kgあたり0.242g(子犬はその2倍の0.484g)と言われています(NRC(National Research Council)1977)。

つまり、3kgくらいの小型犬であれば、ふた切れで必要量を超えてしまうのです。

脂質過多

チーズの主体となる成分のうち、タンパク質と同等か、それ以上に多く含まれるのが脂質です。チーズの25~30%が脂質のため、食べすぎると脂質過多になり、肥満や下痢、膵炎や高脂血症を引き起こす可能性が高くなります。

カロリー過多

チーズは脂質を多く含んでいるため、カロリー過多になりがちです。カロリー過多を続けていると体重が増加し、肥満になるおそれがあります。

肥満になると糖尿病を発症するリスクや関節や心臓に負担がかかり、関節疾患や循環器疾患を患う可能性が高まります。

乳糖による体調不良

犬は乳糖を分解できないため、牛乳を始めとした乳製品を摂取すると、下痢や嘔吐などの消化器症状を引き起こすことがあります。チーズは牛乳から加工する際に乳糖がほとんどなくなるため、大きな問題にはならないとされています。しかし、乳糖不耐症の症状(乳糖が分解できず、下痢や腹痛など)が強いタイプの犬は、チーズを控えたほうがいいでしょう。

アレルギー

犬にとってタンパク質は、食事性アレルギーの原因として多く見られます。そのため、動物性のタンパク質であるチーズも、アレルギー体質の犬には控えたほうがいいと考えられます。

アレルギー症状としては、蕁麻疹(じんましん)のような急性アレルギー反応や下痢などの消化器症状があります。

以上に挙げた成分やカロリーの過剰摂取は犬にとって問題となりますが、わずかであれば中毒を起こすようなことはありません。

チーズに含まれる塩分を犬の必要摂取量で考える

チーズに含まれる塩分を犬の必要摂取量で考える

犬に与えるチーズは低塩分のものを選び、少量で

―チーズには、いろいろな種類がありますが、犬にとってどんなものが適していますか。また、一日にどの程度であれば与えていいものでしょうか?

成犬の一日に必要な食塩の最低量は体重1㎏あたり0.242gですので、以下の表を基に適正範囲内の塩分量となるチーズを選ぶのが望ましいでしょう。

エネルギーと脂質、食塩相当量のいずれも低いものは、カッテージ・チーズとモッツァレラ・チーズ、リコッタ・チーズです。

100gあたりの
食品成分
エネルギー
Kcal
たんぱく質
g
脂質
g
食塩相当量
g
カッテージ・チーズ 105 13.3 4.5 1.0
カマンベール・チーズ 310 19.1 24.7 2.0
ゴーダ・チーズ 380 25.8 29.0 2.0
チェダー・チーズ 423 25.7 33.8 2.0
ブルー・チーズ 349 18.8 29.0 3.8
プロセスチーズ 339 22.7 26.0 2.8
モッツァレラ・チーズ 276 18.4 19.9 0.2
リコッタ・チーズ 162 7.1 11.5 0.4

出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)

例えば、体重3㎏の小型犬であれば、一日に必要な食塩の最低量は0.726(=3kg×0.242g/kg)ですので、カッテージ・チーズを一日70gまで、モッツァレラ・チーズを300gまで、リコッタ・チーズを180gまでということになります。しかし、主食となる食事にも塩分は入っているはずですので、犬に与えるチーズは極力少なくしてください。

―量を抑えていれば、犬にチーズを与え続けていても大丈夫ですか?

ごく少量であっても、人間用チーズは栄養価の偏りが大きく、犬にとって必要な栄養が不足したり、塩分や脂肪分を多く取りすぎたりしてしまいます。そのため、犬に与え続けることは好ましくありません。基本的にはドッグフードを主食とし、おやつとしてチーズを与える場合は、塩分や脂肪分を控えた犬用のチーズを選んだほうがいいでしょう。

犬がチーズをどのくらい食べると危険なのか(食塩相当量)

犬の体重1kgあたり食塩2~3gで中毒症状、4gで致死量

―気を付けていてもチーズを盗み食いされてしまったということがあるかもしれません。どのくらい食べてしまうと、危険なのでしょうか?

犬に塩を与えすぎると中毒症状が現れます。食塩中毒は脳神経症状や肺水腫、腎機能障害などを引き起こし、死亡する場合もある恐ろしいものです。一般的に体重1kgあたり塩分2~3gで中毒症状が現れ、4gで致死量となります。プロセスチーズ100gには、2.8gの食塩が含まれており、犬がこれを食べると中毒症状が出てしまうのです。

犬がチーズを食べすぎて食塩中毒になったときの応急処置

犬がチーズを食べすぎて食塩中毒になったときの応急処置

家庭内ですべき応急処置、対処法

―愛犬がチーズを大量に食べてしまったら、家庭でどう対処したらいいのでしょうか?

犬がチーズを食べすぎて食塩中毒になったと考えられる場合、まずはチーズをいつごろ、どのくらい食べたのかをメモして動物病院に問い合わせてください。そして、できるだけ早く受診するようにしましょう。

すぐに病院に行けない場合は、犬に水分を与えられるようなら少しずつ与えるようにしてください。

愛犬の急なトラブルに、24時間365日、獣医師が電話で直接サポート

ペットメディカルサポート株式会社のペット保険「PS保険」では、24時間365日、獣医師による電話相談サービス「獣医師ダイヤル」を提供しています。愛犬のお困りごとがありましたら、いつでも獣医師に相談できます。

病院での対処法

―愛犬がチーズを食べすぎて食塩中毒を起こしたら、病院ではどのような処置をするのですか?

血液検査で犬の血液中のナトリウム量を測定し、状態を把握します。治療は静脈内輸液を行うことが重要です。症状が重度であれば、入院治療が必要となる場合があるでしょう。

まとめ「犬に人間用のチーズを与えすぎてはいけない」

人間用のチーズは犬にとって食べられるものですが、塩分量や脂肪分が多く、与えるにあたって注意しなければならない食品です。そのため、積極的には人間用のチーズを与えず、犬用のチーズをおやつとして時々食べさせる程度にとどめましょう。

愛犬に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「犬が食べてはいけない危険な食べ物」「犬が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。

関連リンク

犬種別の保険料

  • 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
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  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。