犬が牛乳を飲んだときの症状と応急処置を獣医が解説

最終更新日:2024年07月09日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

牛乳は、栄養価値の高い食品ですが、犬が飲むと下痢や嘔吐、アレルギーを引き起こす場合があります。愛犬が牛乳をなめてしまった、飲んでしまった場合、どんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が解説します。

犬が牛乳を飲んだときの症状と応急処置を獣医が解説

犬が牛乳を飲むと引き起こされる症状

牛乳の成分「乳糖」が犬に下痢を引き起こす

―犬が牛乳を飲むと、具合が悪くなるのはどうしてですか?

牛乳には「乳糖(ラクトース)」という炭水化物に分類される成分が含まれており、この乳糖を体の中で分解するためには、ラクターゼという消化酵素が必要になります。犬は、このラクターゼの分泌がかなり少ないという性質のために、牛乳を飲むと分解されずに腸に刺激を与え、下痢や消化不良といった悪い影響を引き起こしてしまうのです。

人間でも一部で乳糖不耐症という乳糖を分解できない体質の人がいますが、犬はすべて乳糖不耐症であると言えます。

犬が牛乳を飲むと半日以内に下痢になる

―症状は、どのくらいで現れるのですか?

犬が牛乳を飲んでしまった場合、分解されずに残った乳糖は腸で反応を起こすことから、飲んで半日以内に下痢を起こす可能性があります。

成長にしたがって子犬のラクターゼが減少する

―子犬は、母親の母乳を飲んで大きくなりますが、これはどうして大丈夫なのですか?

産まれてから1か月程度の子犬には、母乳の乳糖を分解するために体の中でラクターゼを分泌しています。しかし、牛乳の乳糖をすべて分解できるほどのラクターゼの量はないことから、子犬であっても下痢をします。さらに成長とともにラクターゼの分泌量がほとんどなくなるため、牛乳による下痢に対して注意が必要になるのです。

犬が牛乳を飲んだかも!? こんな症状が見られたら病院へ

犬がもし牛乳を飲んでしまった場合には、以下のような症状が現れることがあります。

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 皮膚に発疹

水のような水様便を出す、排便の回数が多くなる

最も多い症状が下痢ですが、水様便のようなひどい状態になったり、頻回(読み:ひんかい。意味:回数が多いこと)に下痢便が出たりする場合は、脱水症状で犬がぐったりしてしまうことがあるので早めの受診が必要です。

タンパク質成分に対するアレルギー反応

また、牛乳に含まれるタンパク質成分に対して、犬がアレルギー症状を起こす場合もあります。その症状は嘔吐や皮膚に発疹が出るなどさまざまですが、牛乳アレルギーと気付きにくいものです。そのため、嘔吐や発疹症状といった体調不良が出た時点で、早めに動物病院を受診してください。

犬にとって好ましくない牛乳の成分が含まれる食品

犬にとって好ましくない牛乳の成分が含まれる食品

母乳全般はNG。生クリームやアイスクリームには気を付けましょう

―乳糖が含まれる食べ物について教えてください。

牛乳だけではなく、哺乳類全般が母乳として出す乳汁には乳糖が含まれています。また、牛乳が多く含まれている加工品としては、生クリームやアイスクリームなどがあります。生クリームはケーキのような洋菓子に多く含まれていますので、ホイップされた生クリームがたくさん使われているショートケーキは気を付けたほうがいいと思われます。

ヨーグルトの乳酸菌は乳糖を分解する

一方で、ヨーグルトにも乳糖がたくさん含まれていますが、犬がヨーグルトを食べても下痢をすることはほとんどありません。その理由は、ヨーグルトは発酵により乳糖の一部が分解され、さらにヨーグルトに含まれる乳酸菌には乳糖の分解を助ける機能もあるからです。とは言え、乳糖がまったくないわけではないので、犬に大量に食べさせるのは控えたほうがいいでしょう。

犬が牛乳をどのくらい飲むと危険なのか

犬が牛乳をどのくらい飲むと危険なのか

犬が牛乳をなめた、少量を食べてしまったらどうなるの?

―愛犬が牛乳をなめたり、少量を飲んでしまったりしたら、どうなってしまうのでしょうか? 様子を見ていても大丈夫ですか?

犬が牛乳を口にした場合に、どのくらいの量で下痢を始めとする症状が出るのかは正確にわかっていませんが、小腸に入る牛乳の量で症状の程度が異なると考えられるため、犬の体の大きさが関係しています。

人の乳糖不耐症では、体重50kgの成人が牛乳250~300ml以上を飲んだ場合に下痢といった症状が出ると言われています。人と犬を正確には比較できないものの、1kgあたり5~6ml飲めば症状が出るという計算になります。

そのため、体重3kgの小型犬であれば、大さじ1杯、15ml以下なら牛乳をなめたり、口にしたりしても大きな問題はないと考えられます。

また、牛乳は加熱しても乳糖が分解されないため、牛乳を使ったお菓子や料理も注意が必要です。

犬にとって危険な牛乳の摂取量

―犬はどのくらいの量の牛乳を飲むと症状が出るのですか?

犬が牛乳を飲んだ量に関する影響を調べた正確なデータや報告がないため、詳しいことはわかっていません。しかし、体重3kgの小型犬で15~20ml飲むと下痢をすると考えられることから、それ以上の量を飲めば飲むほど下痢の症状が重くなります。ただし、症状の程度は個体差があるので、ある程度の量でも下痢が治らなかったり、嘔吐もしたりして、ぐったりするようなら危険です。

犬が牛乳を飲んでしまったときの応急処置

犬が牛乳を飲んでしまったときの応急処置

家庭内ですべき応急処置、対処法

家庭内でできることはないので、すぐに病院に連絡を

―愛犬が牛乳を飲んでしまったら、家庭でどのような対処をすればいいのでしょうか?

愛犬が誤って牛乳を飲んでしまったら、自宅でできることはないと言っていいでしょう。

水を飲ませて薄めたとしても、飲んだ牛乳の量は変わりません。逆に水分を取り過ぎて下痢がひどくなるかもしれません。

少量であれば動物病院に受診すべきかを問い合わせるといいでしょう。もし、愛犬が牛乳をたくさん飲んでしまった場合は、吐かせることも考えて、早急に動物病院を受診してください。

加えて、すでに下痢や嘔吐などの症状が出ている場合には、動物病院に下痢便や吐いた物を持参して、いつごろからどんな症状が出ているかを獣医師に伝えましょう。

愛犬の急なトラブルに、24時間365日、獣医師が電話で直接サポート

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病院での対処法

―犬が牛乳を飲んでしまったら、病院ではどのような処置をするのですか?

犬に下痢や嘔吐などの消化器症状が強く出ている場合には、牛乳を誤ってたくさん飲んだ以外に、病気も考えなくてはならないため、血液検査やレントゲン検査などが必要になります。また、結果や症状に応じて注射治療を行うこともあります。

まとめ「犬に牛乳を飲ませてはいけない」

「犬に牛乳を与えると下痢をするから良くない」と昔から言われているものの、症状が出る量といった詳しいことはわかっていません。そのため、愛犬に牛乳を飲ませるのは、できるだけ避けることが望ましいと言えます。

牛乳は栄養価が高いので、愛犬に飲ませたいと考える方がいらっしゃるかもしれませんが、下痢を始めとする悪影響を考えると普段から気を付けて与えないことが大切です。

編集部注

本稿では、人間用の牛乳について解説しています。犬用には、乳糖が少ないヤギミルクや、乳糖を含まない牛乳が市販されています。

愛犬に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「犬が食べてはいけない危険な食べ物」「犬が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。

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犬種別の保険料

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  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
  • 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
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