犬がさくらんぼの種を食べたときの症状と応急処置を獣医師が解説

最終更新日:2024年07月17日

本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。

さくらんぼの実は、適正量であれば犬に与えても問題ありません。しかし、さくらんぼは種を始め、果実以外の部位には犬に中毒を引き起こしてしまう危険な成分が含まれています。愛犬がさくらんぼの種をなめてしまった、食べてしまった場合、どんな症状が起こり、どう対処すべきかを獣医師が詳しく解説します。

犬がさくらんぼの種を食べたときの症状と応急処置を獣医が解説

さくらんぼの実だけなら犬が食べても大丈夫

―犬がさくらんぼを食べても大丈夫ですか? 与え方の注意点はありますか?

さくらんぼは、実、葉、茎、花などに分かれていますが、このうち実だけなら、犬が食べても差し支えありません。

さくらんぼの実には、体に有益な糖質・ビタミン・アントシアニンなどの栄養が含まれており、犬が好む味でもあります。そのため、ご褒美としてあげることもできます。

しかしながら、いくら愛犬が好きでもたくさん与えるのは良くありません。糖質を多く含むさくらんぼの食べすぎは、肥満や消化不良につながってしまいます。種を抜いて、ほかのおやつを与えない場合、さくらんぼの実は、体重5kgの犬で1日2個程度が適量とされます。

また、さくらんぼに対するアレルギーを持つ犬もいます。アレルギーを起こすと、顔の腫れ、皮膚のかゆみ、嘔吐、下痢などが症状として現れます。たとえ愛犬がさくらんぼを大好きでも、食後にこのような症状が出る場合には与えるのを控えましょう。

犬がさくらんぼの種を食べると引き起こされる症状

犬がさくらんぼの種を食べると引き起こされる症状

さくらんぼの種に含まれる成分「アミグダリン」が犬に中毒症状を引き起こす

―犬がさくらんぼの種を食べると、何が原因で、どんな症状が現れるのですか?

さくらんぼの種には、アミグダリンという物質が含まれていますが、これ自体に毒性はありません。しかし、アミグダリンが犬の体内で消化され生じる「シアン化水素(青酸)」によって、犬に中毒症状を引き起こすのです。

犬が中毒量を摂取したときには、30分~3時間以内に痙攣(けいれん)、呼吸困難、嘔吐、下痢などの症状が現れます。また、アミグダリンは、さくらんぼの種や葉に限らず、茎にも含まれていますので、これらも愛犬に口にしてしまうことがないよう注意してください。

これらのほか、さくらんぼの花にも「クマリン」という肝臓や腎臓を傷める物質が含まれていますので、これらを愛犬が誤って食べないようにしましょう。

犬がさくらんぼを食べたかも!? こんな症状が見られたら病院へ

  • 食欲がない
  • 元気がない
  • 体が熱い
  • 吐いている
  • 下痢をしている
  • お腹を痛そうにしている

特に緊急性の高い状態

  • 舌が紫色っぽい
  • 呼吸が荒い
  • 頻繁に吐いている
  • けいれんしている
  • 立てない
  • 歩けない
  • 意識がもうろうとしている

―さくらんぼの種と同じ、犬にとって有害な成分が含まれる食べ物について教えてください。

アミグダリンは、びわ、桃、アンズ、梅などにも含まれています。また、これらを用いた加工食品も注意しましょう。

犬がさくらんぼの種をどのくらい食べると危険なのか

犬がさくらんぼの種をどのくらい食べると危険なのか

犬がさくらんぼの種をなめた、少量を食べてしまったらどうなるの?

―愛犬がさくらんぼの種をなめたり、少量を食べてしまったりしたら、どうなってしまうのでしょうか? 様子を見ていても大丈夫ですか?

犬の健康に害を及ぼすアミグダリンは、さくらんぼの種の中の仁と呼ばれる部位や、葉に多く含まれます。そのため、種の表面をなめただけや、かみ砕かずに飲み込んだ場合、中毒の心配はかなり少ないでしょう。しかし、さくらんぼの種をかじって飲み込んだ、または葉・茎・花を食べた場合には、犬に中毒症状が引き起こされる可能性があります。

なお、ジャムや缶詰などに加工された場合、それらに含まれるアミグダリンの量は非常に少ないとされ、犬に及ぼす中毒の可能性は低いと考えられます。ただし、加工食品に含まれている過剰な糖分は、肥満や糖尿病などのリスクを高めますから、多く与えないようにしましょう。

犬にとって危険なさくらんぼの種の摂取量

―どのくらいの量を食べると中毒症状が出るのですか?

アメリカの有害物質疾病登録局(ATSDR)の報告によれば、犬を体重1kgあたり10.8mgのシアン化水素を14週間、毎日摂取したとき、中毒症状を認めたとしています。また、アメリカ国際衛生研究所(NIH)によると、さくらんぼの種は、1個あたり585μgのシアン化水素を発生させるという報告もあります。

以上のことから、犬がさくらんぼの種によって中毒症状を引き起こされるのは、体重1kgあたり、毎日18個、14週間にわたって食べ続けるという計算になります。

また、致死量については、犬の体重1kgあたり、1日に40個のさくらんぼの種とされます。例えば、3kgの小型犬が1日に120個ものさくらんぼの種を食べると危険ということです。

このように、犬がさくらんぼの種を食べて、中毒や危険な状態になるには、相当量を摂取しなければならないと言えます。しかし、犬は、さくらんぼの種だけでなく、葉や茎を食べてしまうかもしれません。

また、種そのものが愛犬の胃腸を傷つける可能性を考えれば、実以外の部分を食べないように気を付けてあげることが何より大切です。

犬がさくらんぼの種・葉・茎・花を食べてしまったときの応急処置

犬がさくらんぼの種・葉・茎・花を食べてしまったときの応急処置

家庭内ですべき応急処置、対処法

―愛犬が、さくらんぼの種を食べてしまった場合、自宅でできる応急処置について教えてください。

応急処置としてご自宅でできることは残念ながらありません。

愛犬が、さくらんぼの種や葉、茎、花を食べてしまったあと、何らかの状態の変化がある場合は、早急に動物病院を受診してください。その際、食べ残しがあれば、動物病院に持参すると診断や治療に役立つ場合があります。

愛犬の状態に変化がないようでしたら、さくらんぼを食べた日時、量、食べた後の愛犬の状態を整理、記録しながら様子を見てください。のちに動物病院を受診する際、診断・治療の役に立ちます。

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病院での対処法

―犬がさくらんぼの種を始め、中毒症状を及ぼす危険部位を食べてしまったら、病院ではどのような処置をするのですか?

動物病院では症状や状況に応じた検査・処置を行います。

血液検査・レントゲン検査・超音波検査など

犬が摂取したさくらんぼのアミグダリンが体内に影響している度合や、種の有無などを調べます。
1万~2万円程度

催吐処置、胃洗浄

胃の中にさくらんぼの種や葉が残っていると思われる場合に行うことがあります。
1万~5万円程度(処置前検査を含む)

点滴、薬剤処置

中毒物質の解毒を促し、症状の緩和を目的に行います。入院が必要な場合があります。
1日あたり1万~30万円程度

摘出処置

催吐処置では不十分な場合に行うことがあります。摘出処置は全身麻酔が必要です。費用は摘出方法によってさまざまです。
10万~30万円程度

※こちらの診療費は参考例です。平均や水準を示すものではありません。診療費は病院によって異なります。

まとめ「犬にさくらんぼの果肉は大丈夫! 種や葉、茎、花を食べさせてはいけない」

さくらんぼの果実は適量であれば、ご褒美として愛犬に与えても問題ありません。しかし、さくらんぼの種や、葉、茎、花は愛犬に中毒症状を引き起こす可能性がありますので絶対に与えないようにしてください。

また、さくらんぼは、犬が好む風味を持っていますので、目を離した隙に愛犬が誤って食べてしまうことのないように、ぜひ気を付けてあげましょう。

愛犬に食べさせていいかを迷ったり、何かを食べて具合が悪くなったかもしれないと思ったりしたら、獣医師監修の「犬が食べてはいけない危険な食べ物」「犬が食べても大丈夫なもの」を併せてご覧ください。

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  • ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
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ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
カ行
サ行~ナ行
サ行
タ行
ナ行
ハ行~ワ行・その他
ハ行
マ行
ヤ行
ラ行
ワ行
ミックス犬(※1)
  • 8か月未満:6kg未満
  • 8か月以上:8kg未満
  • 8か月未満:6kg以上~20kg未満
  • 8か月以上:8kg以上~25kg未満
  • 8か月未満:20kg以上
  • 8か月以上:25kg以上

※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。

PS保険

記事監修:ペットメディカルサポート株式会社

動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。