犬の包皮炎の症状と原因、治療法について
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
犬の包皮炎の症状
包皮炎は、陰茎を包む包皮粘膜の炎症です。
犬の包皮には、もともとブドウ球菌や連鎖球菌など多くの細菌が常在していて、健康なときは悪さをしません。しかし、傷を負ったり、不衛生な状態のまま放置したりすると細菌が過剰に増殖し、炎症を引き起こします。
犬が包皮炎にかかると、次のような症状が現れます。
- 包皮から黄色や緑色、クリーム色の膿(うみ)のような排出物が見られる
- 陰茎を気にしてよくなめている
- 包皮が腫れている
春機発動前(生殖可能になる前)の若い犬や去勢していない犬も、包皮から分泌物を出す場合があります。ただし、炎症が原因ではなくホルモンの影響であるケースがほとんどで、通常は治療対象外です。
こんな症状が見られたらすぐに動物病院を受診
犬の包皮の腫れや分泌物だけでなく、次のような症状が見られる場合は、包皮炎により尿道炎や膀胱炎(ぼうこうえん)を起こしている可能性があります。
- 何度もトイレに行く
- 血尿が見られる
- おしっこをする際に痛がる
- おしっこが臭い
膀胱炎や尿道炎にまで発展すると、症状が長引く可能性があります。様子を見ずに、早めに動物病院を受診しましょう。
犬の包皮炎の原因
犬の包皮に傷がついたり、異物が入り込んだりすると、ブドウ球菌や連鎖球菌などの常在菌が過剰に増殖し、包皮に炎症が起こって包皮炎を発症します。
包皮炎にかかりやすい犬の特徴は?
次のような特徴をもっている犬は、包皮炎にかかりやすいため注意が必要です。
交配を行っている犬
交配が原因で包皮に傷がつき、細菌が増殖する可能性があります。
包茎(包皮から陰茎を出せない状態)の犬
包皮内に汚れがたまりやすく、炎症が起こる原因になります。ただし、軽度の包茎は健康な犬でもよく見られるため、治療は行いません。
未去勢の犬
包皮からの分泌物が原因で包皮が汚れやすく、細菌が増殖するリスクが高まります。
犬の包皮炎の治療法
軽度の場合
犬に治療しなくてもほとんどの場合、自然に治ります。動物病院でも、薬は使わずに洗浄だけを行い、自然治癒を期待して様子を見るケースがあります。
重度の場合
犬の包皮の洗浄と抗菌薬の投与を行います。痛みがある場合は、必要に応じて抗炎症薬を使用します。
犬の包皮の洗浄にはポピドンヨードを用い、増殖した細菌や膿を物理的に洗い流します。
抗菌薬はまずは1週間ほど投与します。2週間にわたって効果が持続する注射タイプもあるため、自宅での投薬が難しい場合は獣医師に相談しましょう。
抗菌薬を投与しても回復しない場合
原因となっている細菌を特定するために、犬の包皮から排出された分泌物を一部採取し、細菌の培養検査を必要に応じて行います。
検出された細菌がどの種類の抗菌薬に耐性があり、どの種類の抗菌薬に感受性があるのかがわかるため、抗菌薬の選択に大変役立つ検査です。院内で検査可能な場合や、外部検査機関に検査を依頼する場合があります。
包茎が包皮炎の悪化における要因になっている場合
包茎の治療として、犬の包皮の一部分に切れ込みを入れ、包皮口を広げる外科的治療を行います。ただし、基本的に全身麻酔下での処置になるため、心臓病を始めとする基礎疾患がある犬は治療できない場合があります。
包皮炎により膀胱炎を発症している場合
愛犬が膀胱炎を併発している疑いがある場合は、膀胱炎の診断や原因を精査するために、エコー検査や尿検査、尿の培養検査を必要に応じて行います。膀胱炎の基本的な治療は、抗菌薬と鎮痛剤の投与です。
前立腺の疾患により包皮炎を発症している場合
前立腺の疾患が原因で、犬の包皮から分泌物が排出され、包皮炎を引き起こす可能性があります。前立腺疾患が疑われる場合は、前立腺の検査も併せて行います。
無治療の場合
犬の包皮炎が軽度の場合、無治療でも自然治癒が期待できます。しかし、重度の包皮炎の場合、放置すると炎症がどんどんひどくなって慢性化したり、尿道炎や膀胱炎を引き起こしたりするおそれがあります。
愛犬の包皮炎の程度を飼い主さんが自己判断するのは難しいため、包皮炎が疑われる場合は早めに動物病院を受診して、獣医師に診断してもらいましょう。
犬の包皮炎の予防法
陰部を洗浄し、清潔に保つ
犬の陰部が汚れていると細菌が増殖しやすく、包皮がダメージを受けて皮膚のバリア機能が低下するため、包皮炎を発症するリスクが高まります。日ごろから愛犬の陰部を洗浄して清潔に保つと、包皮炎の予防につながります。
愛犬の包皮の汚れが目立つ場合は、ぬるま湯で包皮を軽く洗いましょう。ただし、ゴシゴシ洗い過ぎると包皮や亀頭に傷がつき、包皮炎や亀頭炎の原因となるため、力加減に注意してやさしく洗ってあげてください。
陰茎周辺の毛をカットする
犬の包皮内に体毛が入り込むと、細菌が侵入しやすくなります。愛犬の陰茎周辺の毛を短くカットすると、包皮内に毛が入り込むのを防げるため、包皮炎の予防につながります。
去勢手術をする
愛犬を去勢すると分泌物が減るため、包皮が清潔に保たれ、包皮炎の予防につながります。また、マウンティングを抑制でき、陰茎に傷がつくのを防ぐ効果もあります。
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犬種別の保険料
- 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
- ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
- 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
- アーフェンピンシャー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- アイリッシュ・セター
- 秋田
- アフガン・ハウンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- アメリカン・ピット・ブルテリア
- アメリカン・フォックスハウンド
- アラスカン・マラミュート
- イタリアン・グレーハウンド
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セター
- イングリッシュ・ポインター
- ウィペット
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
- ウェルシュ・テリア
- エアデール・テリア
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オーストラリアン・シルキー・テリア
- オーストラリアン・テリア
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カ行
- カーリーコーテッド・レトリーバー
- 甲斐
- カニーンヘン・ダックスフンド
- キースホンド/ジャーマン・ウルフスピッツ
- 紀州
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- キング・チャールズ・スパニエル
- グレート・デーン
- グレート・ピレニーズ
- グレーハウンド
- ケアーン・テリア
- ケリー・ブルー・テリア
- コーイケルホンディエ
- コーカサス・シープドッグ
- ゴードン・セター
- ゴールデン・レトリーバー
- コリア・ジンドー・ドッグ
- コリー
サ行~ナ行
サ行
- サモエド
- サルーキ
- シー・ズー
- シーリハム・テリア
- シェットランド・シープドッグ
- 四国
- 柴(小柴・豆柴も含む)
- シベリアン・ハスキー
- シャー・ペイ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ジャーマン・ポインター
- ジャイアント・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア
- スカイ・テリア
- スキッパーキ
- スコティッシュ・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
- スタンダード・シュナウザー
- スタンダード・ダックスフンド
- スタンダード・プードル
- セント・バーナード
タ行
- ダルメシアン
- ダンディ・ディンモント・テリア
- チェサピーク・ベイ・レトリーバー
- チベタン・スパニエル
- チベタン・テリア
- チベタン・マスティフ
- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
- チャウ・チャウ
- チワワ
- 狆(ちん)
- トイ・プードル
- トイ・マンチェスター・テリア
- ドーベルマン
- ドゴ・アルヘンティーノ
- 土佐
ナ行
- ナポリタン・マスティフ
- 日本スピッツ
- 日本テリア
- ニューファンドランド
- ノーフォーク・テリア
- ノーリッチ・テリア
ハ行~ワ行・その他
ハ行
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
- パグ
- バセット・ハウンド
- バセンジー
- パピヨン
- ハリア
- ビアデッド・コリー
- ビーグル
- ビション・フリーゼ
- ブービエ・デ・フランダース
- プーミー
- プーリー
- プチ・バセット・グリフォン・バンデーン
- プチ・バラバンソン
- フラットコーテッド・レトリーバー
- ブリタニー・スパニエル
- ブリュッセル・グリフォン
- ブル・テリア
- ブルドッグ
- ブルマスティフ
- フレンチ・ブルドッグ
- ペキニーズ
- ベドリントン・テリア
- ベルジアン・シェパード・ドッグ
- ボーダー・コリー
- ボーダー・テリア
- ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ
- ボクサー
- ボストン・テリア
- 北海道
- ポメラニアン
- ポリッシュ・ローランド・シープドッグ
- ボルゾイ
- ボロニーズ
- ホワイト・シェパード・ドッグ
マ行
- マスティフ
- マルチーズ
- マンチェスター・テリア
- ミディアム・プードル
- ミニ・オーストラリアン・ブルドッグ
- ミニチュア・シュナウザー
- ミニチュア・ダックスフンド
- ミニチュア・ピンシャー
- ミニチュア・プードル
- ミニチュア・ブル・テリア
ヤ行
ラ行
- ラージ・ミュンスターレンダー
- ラサ・アプソ
- ラブラドール・レトリーバー
- レークランド・テリア
- レオンベルガー
- ローデシアン・リッジバック
- ロットワイラー
ワ行
ミックス犬(※1)
- 8か月未満:6kg未満
- 8か月以上:8kg未満
- 8か月未満:6kg以上~20kg未満
- 8か月以上:8kg以上~25kg未満
- 8か月未満:20kg以上
- 8か月以上:25kg以上
※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。