犬の急性腎不全の症状と原因、治療法について
最終更新日:2024年07月09日
本コンテンツは獣医師2名による確認を行い、制作をしております。
- 犬の急性腎不全ってどんな病気?
- どうして症状が出るの?原因は?
- どんな犬が急性腎不全にかかりやすいの?
- 犬の急性腎不全の症状とチェック項目
- 犬の急性腎不全の治療にはどんな方法があるの?
- どうやって予防したらいいの?あるいは、症状を緩和するにはどうしたらいいの?
犬の急性腎不全ってどんな病気?
腎臓の働き
腎臓は、血液をろ過して必要なものは再吸収し、不要な老廃物や余分な水分を尿として排泄するための臓器です。また、血圧を調節したり、赤血球を作る指令を出すホルモンを分泌したりと、生きていくために重要な役割を担っています。
腎不全の症状
「腎不全」というのは、腎機能低下によって腎臓本来の働きができなくなり、高窒素血症、および尿毒症症状が出ている状態のことです。病態によって急性と慢性に分けられますが、いずれも尿毒症症状が出ていない限りは腎不全とは呼びません。尿毒症症状とは、腎臓から排泄されるはずの毒素が体内にたまってしまい、元気や食欲がなくなる、嘔吐するなどが挙げられます。
犬の急性腎不全とは?
急激な腎機能の低下と尿毒症症状を示す
犬の急性腎不全は、ショックや外傷など急激に腎機能が低下するような要因により、高窒素血症、および尿毒症症状が出ている状態です。急激に、しかもかなり具合が悪くなるため、見逃されることはほとんどありませんが、対応が遅れてしまうと回復までに時間がかかる、あるいは回復が難しくなることもある恐ろしい病気です。
急性腎不全にはいくつかの段階があり、まず何らかの原因によって腎臓の尿細管という部分がダメージを受けます。尿細管は、血液がろ過されてできた「原尿」から、体に必要な水分やミネラルなどを再吸収し、不要な成分を分泌する場所です。この段階で、犬自身には何も症状がなく、検査でも異常は見つかりません。しかし、徐々に腎臓のダメージが大きくなると、尿量が低下するようになり、乏尿(尿が少ない状態)から無尿(尿が作られなくなる状態)へと進行します。
どうして症状が出るの?原因は?
急激に腎機能が低下する原因は多岐に渡りますが、原因となる場所で「腎前性(腎臓よりも手前に原因がある場合)」「腎性(腎臓自体に原因がある場合)」「腎後性(腎臓より後ろに原因がある場合)」の3つに分けられます。
腎前性によるもの
腎前性は、腎臓に流れる血液量が急激に減ってしまうタイプで、原因として、ショック状態、重度の脱水状態、全身麻酔、外傷、広い範囲の火傷などがあります。
腎性によるもの
腎性は、腎臓自体に問題を起こすような感染症、糸球体腎炎、リンパ腫、腎臓に毒性のある中毒性物質の摂取などが挙げられます。中毒性物質は、非ステロイド系消炎鎮痛剤や、不凍液や保冷剤に使われるエチレングリコール、食べ物では、ぶどうやレーズン、ユリ科植物のような観葉植物が代表的です。
腎後性によるもの
腎後性は、尿路が閉塞してしまうもので、尿石症や尿路の腫瘍が挙げられます。
どんな犬が急性腎不全にかかりやすいの?
感染症にかかりやすい、尿石症になりやすい犬
急性腎不全に、かかりやすい犬種や年齢はありません。感染症や尿路閉塞のような原因があれば、どんな犬でもかかる可能性があります。
急性腎不全を起こす感染症として挙げられる犬レプトスピラ病は、そのワクチンを接種せず、ネズミのような野生動物が身近にいる環境で暮らす犬がかかりやすいと言えます。これは、レプトスピラという病原体を保有している野生動物の尿を舐めてしまうと感染するためです。
また、尿石症になりやすい犬は、尿路閉塞になることで腎後性の急性腎不全にかかりやすいと言えるかもしれません。
これらのほか、最も注意が必要なのは、異物誤飲の癖がある犬です。人が食べ残したぶどうやレーズンを食べてしまったり、室内のユリ科の観葉植物をかじってしまったりすると急性腎不全になる危険性があります。
犬の急性腎不全の症状とチェック項目
急性腎不全が疑われる症状
- 急に元気がなくなる、嘔吐する(尿毒症症状)
- おしっこが少ない、あるいは、おしっこが出ない
急性腎不全では、急激に尿毒症症状が現れます。乏尿、無尿は、急性腎不全の犬のうち61%で見られる症状だとされています。
腎後性では、尿毒症症状が出る前に、尿をしたいのに尿が出にくい、出ないという症状が見られます。また、「1週間くらい前から何となく元気や食欲がない」ということはほとんどありません。実際の医療現場では、「昨日までは元気で走り回っていたのに、今朝から急にぐったりして何度も吐いている」といった主訴(患者、飼い主が訴える症状)で動物病院を受診されることが多いようです。
犬の急性腎不全はどうやって診断されるの?
何よりも重要なのが、しっかりとした問診です。これは、腎臓に毒性のある物質を口にしていないかを確認する必要があるためです。中毒性物質の中には、食べてから治療を開始するまでの時間によって命にかかわる場合があるため、何を食べたか、食べてからどのくらいの時間が経っているのかをしっかり確認します。
次に血液検査を行い、高窒素血症と尿毒症症状があれば腎不全と診断します。通常は血液検査で高窒素血症だけでなく、ほかの項目もチェックし、体内の血液バランスの異常がないかを確認します。また、尿検査や超音波検査を組み合わせて行うこともあります。
犬の急性腎不全の治療にはどんな方法があるの?
集中的な管理が必要になるため、入院して治療を行います。急性腎不全の犬は、基本的に脱水を起こしているため、まずは点滴で脱水の改善を行います。
しかし、点滴治療をしても乏尿や無尿の改善が見られない場合は、利尿剤を投与します。利尿剤を投与してもこれらの改善がない場合、残された治療は透析療法です。人の場合は血液透析が行われますが、特殊な機器や専門知識が必要とされるため、犬では難しいとされています。その代わりとして、腹膜透析を行うことがあります。ただし、腹膜透析もすべての動物病院で実施しているわけではありません。
腎後性のうち、炎症や結石により尿路閉塞が起きている場合は、尿道に炎症で分泌された物質や結石成分が詰まってしまっているため、これを除去する処置を行います。
犬の急性腎不全は治せるの?
尿細管は治療によって再生できますが、治療を始めるまでに受けたダメージの程度によって、回復するまでの期間が変わります。一般的に腎障害は1~3週間続きますが、場合によっては数ヶ月間続くこともあります。これを乗り切ると回復期に入りますが、完全に回復せず、ある程度の腎障害が残った状態から慢性腎臓病に移行してしまうこともあるようです。
また、乏尿や無尿といった尿に異常が出ている場合は、回復が難しいケースが多いとされています。
どうやって予防したらいいの? あるいは、症状を緩和するにはどうしたらいいの?
腎性のうち、犬レプトスピラ症はワクチン接種によって、中毒性物質は誤飲をしないように気を付けることで予防可能です。
腎後性の代表である尿石症も、定期的に尿検査を行うことで尿路閉塞を起こす前に対応可能です。
しかし、腎前性の場合は、予防の難しいものが多いのですが、早期診断・早期治療がとても重要です。また、回復を左右するのは、治療を始めるまでの時間が大きくかかわってくるので、尿毒症症状を見逃さないようにしましょう。
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犬の泌尿器系の病気
犬種別の保険料
- 純血犬は、犬種により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類され、それぞれ保険料が異なります。犬種の区分については、「犬種分類表」をご確認ください。
- ミックス犬の保険料は、年齢と体重により「小型犬」「中型犬」「大型犬」の3つに分類します。詳しくは、「犬種分類表」の「ミックス犬」の欄をご確認ください。
- 猫の場合は、品種によらず純血猫もミックス猫もすべて同じ保険料です。
ア行~カ行犬の品種分類表
ア行
- アーフェンピンシャー
- アイリッシュ・ウルフハウンド
- アイリッシュ・セター
- 秋田
- アフガン・ハウンド
- アメリカン・コッカー・スパニエル
- アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
- アメリカン・ピット・ブルテリア
- アメリカン・フォックスハウンド
- アラスカン・マラミュート
- イタリアン・グレーハウンド
- イングリッシュ・コッカー・スパニエル
- イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル
- イングリッシュ・セター
- イングリッシュ・ポインター
- ウィペット
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ウェルシュ・コーギー・カーディガン
- ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
- ウェルシュ・スプリンガー・スパニエル
- ウェルシュ・テリア
- エアデール・テリア
- オーストラリアン・キャトル・ドッグ
- オーストラリアン・ケルピー
- オーストラリアン・シェパード
- オーストラリアン・シルキー・テリア
- オーストラリアン・テリア
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
カ行
- カーリーコーテッド・レトリーバー
- 甲斐
- カニーンヘン・ダックスフンド
- キースホンド/ジャーマン・ウルフスピッツ
- 紀州
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- キング・チャールズ・スパニエル
- グレート・デーン
- グレート・ピレニーズ
- グレーハウンド
- ケアーン・テリア
- ケリー・ブルー・テリア
- コーイケルホンディエ
- コーカサス・シープドッグ
- ゴードン・セター
- ゴールデン・レトリーバー
- コリア・ジンドー・ドッグ
- コリー
サ行~ナ行
サ行
- サモエド
- サルーキ
- シー・ズー
- シーリハム・テリア
- シェットランド・シープドッグ
- 四国
- 柴(小柴・豆柴も含む)
- シベリアン・ハスキー
- シャー・ペイ
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ジャーマン・ポインター
- ジャイアント・シュナウザー
- ジャック・ラッセル・テリア
- スカイ・テリア
- スキッパーキ
- スコティッシュ・テリア
- スタッフォードシャー・ブル・テリア
- スタンダード・シュナウザー
- スタンダード・ダックスフンド
- スタンダード・プードル
- セント・バーナード
タ行
- ダルメシアン
- ダンディ・ディンモント・テリア
- チェサピーク・ベイ・レトリーバー
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- チャイニーズ・クレステッド・ドッグ
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- 狆(ちん)
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ナ行
- ナポリタン・マスティフ
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- ノーリッチ・テリア
ハ行~ワ行・その他
ハ行
- バーニーズ・マウンテン・ドッグ
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ワ行
ミックス犬(※1)
- 8か月未満:6kg未満
- 8か月以上:8kg未満
- 8か月未満:6kg以上~20kg未満
- 8か月以上:8kg以上~25kg未満
- 8か月未満:20kg以上
- 8か月以上:25kg以上
※ 「犬種分類表」に記載のない犬種の分類につきましては別途お問い合わせ下さい。
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記事監修:ペットメディカルサポート株式会社
動物病院での実務経験をもつベテラン獣医師および動物看護師が多数在籍するペット保険の少額短期保険会社。スタッフ全員が動物好きなのはもちろんのこと、犬や猫といったペットを飼っている者も多いので、飼い主様と同じ目線に立ったサポートに取り組んでいます。